第393話 入れない冒険者
ここでお待ちください、って言われても、気になるのは仕方ない。
門の脇から、こっそりのぞき見。
私の後ろには他の村人たちも集まってきている。
門の前で怒鳴っていたのは、見たことのない男女。赤い髪を一つにまとめた女の人と、その女の人より頭2つ分くらい大きい男の人。二人のがっしりした体格や格好から、冒険者だろうと推測する。
その二人が、門の前で空中をドンドン叩いてる。一瞬、器用なことしてるなぁ、と思ったんだけど、すぐに結界のことを思い出す。
村の結界は、一度村に来て、私が入るのを許した相手で人であれば、問題なく通れるし、入れてほしい人がいれば、カスティロスさんが声をかけてくれるはずなのだ。
「お前ら、どうした」
声をかけたリーダーさんが、御者さん(エルフ)に目を向ける。御者さんは肩をすくめて、二人を指さすだけ。
「どういうことよ!」
女の人の鼻の頭が、見事に真っ赤になってる。
あれ、もしかして、ぶつかった跡なのかな。
「なんで、俺たちは入れないんだよっ」
すんごいオーバーリアクションで、文句を言っているのは男の人。
リーダーさんは、大きくため息をつく。
「お前らなぁ、ケイドンの街を出るときに言ったよな。この村に入るには許可がいるから、許可がおりるまでは村の外で待つことになるって」
「あ? ああ、聞いたが、荷馬車はどんどん入っていってるってことは、許可が下りてるってことじゃないのかよ」
「お・ま・え・らは、許可は下りてない」
「は?」
「下りてないから、入れないんだ」
「くそっ、だったら早くっ……うわっ!?」
「きゃぁっ!」
リーダーさんに詰め寄ろうとした2人に、いきなり頭上から大量の水が落ちてきた。
「な、なにっ!? どういうこと!?」
「くそっ、誰だ、こんなことしやがったのはっ!」
私の方が知りたい。
リーダーさんも、一瞬驚いてたけど、すぐに周囲を警戒する。
『あれは、いれちゃダメなやーつ!』
『やーつ!』
いきなり、私の肩に現れたのは水の精霊たち。
おまえさんたちの仕業かいっ。
『にばしゃのなかにも、だめなやつがいるー』
『いるー!』
風の精霊たちがひょいひょいと飛んでいったかと思ったら。
「ギャッ!?」
「ぐえっ」
最後尾の荷馬車から、人族の男が2人、転げ落ちてきた。
「な、なんだ!?……おいっ! マックス! キャシディ!」
リーダーさんの声に、すでに村の中にいた熊と虎の獣人がすぐさま動いた。
「くそっ」
「な、なんでっ」
ずぶ濡れの二人から、零れた声。
あー、二人の仲間ってことか。
『えるふたち、にぶすぎ』
『ぼうけんしゃ、にぶすぎ』
「も、申し訳ございませんっ!」
いつの間にか私の背後に来ていたカスティロスさん。
精霊たちの言葉が聞こえたのか、真っ青な顔になっている。
『とくに、あいつら、へんなのもってる。むらにいれちゃ、ダメなやーつ』
『ダメなやーつ!』
小さい精霊たちが、転がり落ちてる男たちを指さしながら、まるで戦隊モノのヒーローみたいにポーズとってる……。
……誰が教えた(頭によぎるのは……稲荷さん)。
「とりあえず、捕まえて事情を聞いてください」
「かしこまりましたっ!」
慌ててカスティロスさんたち、グルターレ商会の面々が飛び出して行った。





