表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
夏の『嵐』、予防と対策

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

433/978

第392話 我儘姫の噂

 村の入口に着くと、ちょうどグルターレ商会の最初の荷馬車が入ってくるところだった。


「あれま。今回は随分と荷馬車が多い……」


 門から外を覗くと、あと6、7台ほどの荷馬車が行列になっていた。

 さすがに、あれ全てを、うちの村で下ろしていく物ではないだろう。

 そう思いながら、カスティロスさんの姿を探すと、出迎えていたハノエさんと談笑している。今日は、ネドリは村人たち数名とダンジョンに行っているそうなので、ハノエさんが対応するようだ。

 私は入ってきた荷馬車の方に目を向ける。

 見覚えのあるエルフの護衛と冒険者たちの姿が見えた。私の姿に気が付いたのか、それぞれに手をあげたり、会釈をしてくる。


「お久しぶりです」

「また来ましたよ」


 中でも、Bランクパーティ『焔の剣』のリーダー(人族)が、ニコニコしながら声をかけてきた。


「今回は、随分と荷が多いですね」

「ほとんどが小麦などの食料なんですがね」


 なんでも、獣王国と帝国の一部で酷い洪水が起きたらしく、特にその地域は小麦の産地だったそうで、壊滅状態なのだとか。

 幸いなことに、コントリア王国は去年の豊作のおかげもあって、備蓄が多く、余剰分を買い上げてきたのだそうだ。


「大変ですねぇ」

「ハハハ、まぁ、噂では我儘姫に天罰が下った、なんて話もあるんですがね」

「……は?」

「いやぁ、その洪水が起きたっていう領地が、我儘姫……ってご存知ですよね?」


 そりゃぁ、知ってますがな。

 渋い顔をしながら頷く私。


「その姫の領地だっていうんですよ」


 国王が末の姫のためにと、わざわざ王領だったところを、姫専用の領地にしたのだとか。

 我儘姫のお小遣い領地か!


「そこは帝国の一部とも接している所でしてね。今回の洪水で橋まで壊れて、通行できなくなっているらしいんですわ。まぁ、幸いなことに、死人も怪我人も出てないっていうんで、よかったといえば、よかったんでしょうが」


 そこで、噂が出ているらしい。 

 なんでも、季節外れの大雨だったらしく、精霊たちに嫌われただの、神の怒りに触れただのと言われているらしい。

 ……チラリと精霊たちのことが頭をよぎる。まさかね。


「カスティロスの旦那は、こりゃぁ、小麦を持ち込めば儲かるってんで、こんなに買い込んだわけで」


 実際、うちに下ろす予定の商品は荷馬車2台分だけらしい。

 我儘姫の領民には気の毒ではあるが、我儘姫に一矢報いた気になってしまうのは、仕方がないと思う。


「そういえば、その我儘姫が冒険者ギルドに出している依頼って、ご存知です?」


 リーダーさんに聞いてみると、獣王国の方では、それはそれは有名な話なんだとか。

 

「あ、俺たちは、受けてませんからね!?」


 両手を振りながら否定しまくるリーダーさんに、思わず笑ってしまう。


「コントリアのギルドにも出てはいましたが、こっちの人間は獣人ってだけで下に見るのが多いんで」


 そもそも受ける以前の問題なんだそうだ。

 受けないなら、それでいいって言う話なんだけど。

 ちなみに『焔の剣』の人族(リーダーさんと、もう一人)は、帝国の先、ジェアーノ王国の近くの小さい国の出身なんだそうだ。

 リーダーさんと並びながら、続々と入ってくる荷馬車を見送っていると、突如、門の外から怒鳴り声が聞こえてきた。


「何事?」

「サツキ様は、ここでお待ちください」


 さっきまでの気さくな感じから、急に言葉遣いが変わったリーダーさんが、怒鳴り声の聞こえた荷馬車の方へと駆け出していく。 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ