第391話 ドリンクサーバー
「ふふふ、壮観」
今日は寺子屋の子供たち用に飲み物を持っていこうと、ログハウスの裏手の貯蔵庫に来ている。
薄暗がりの中、貯蔵庫の棚に並んでいる物に、思わず、笑みが浮かぶ。
――梅酒、梅シロップ、梅のハチミツ漬け、これに追加のしょうゆ漬け、梅干し用の塩漬け。
多めに買ったつもりの瓶だったのが、梅の粒が一粒一粒が大きかったせいで全部使い切ってしまった。そのせいもあって、棚は凄いことになっている。
レベルMAX前なら『収納』にしまっておいたのだけれど、今では時間経過がなくなってしまった。ただ保管するだけだったらよかったけど、ちゃんと漬けるために、常時低温で湿度も一定している貯蔵庫の棚に並べているのだ。
その『収納』の中には、ドリンクサーバー2台にすでに冷たい麦茶(1つは砂糖入り)が入ってる。
「えーと……、そうそう、これこれ」
私が棚から手に取ったのは、大きな瓶の中に入っている梅シロップ。
普通、シロップとして使えるようになるのに早くても10日、しっかりした風味を楽しむなら2、3週間はかかるって書いてあったけど、今、目の前にあるのは、そんなに時間経ってないのよねぇ(遠い目)。
とりあえず、ドリンクサーバーの1台にシロップを入れて冷たい水で割る。
――絶対、美味しいよね。
にんまりした私は、ドリンクサーバーを『収納』すると、貯蔵庫から出て、スーパーカブに乗って村へと向かった。
ちなみにママチャリは……モリーナさんではなく、ヘンリックさんたちに奪われた。
皆で、あーだこーだやっている中、モリーナさんも紛れこみながら盛り上がってた。
そう、盛り上がってはいたんだけど、乗るだけに納まらず……見事に分解され……組み立て直そうとして……直せなかった模様。
なんか皆で叫んでたけど(錬金術師がどうとか、魔術師がどうとか)、とりあえず放置。
2台目はない。
村の寺子屋に着く頃には大分日差しが強くなってきて、村を歩いていると少し暑く感じるようになった。
私が寺子屋の部屋の中に入ったタイミングが、午前中の授業が終わったのと同時だったようで、子供たちがワラワラと集まってきた。
「サツキ様!」
「きょうはどうしたの?」
「ちょっとね」
私は腰や足に抱きついてくる子たちの頭を撫でてから、司祭様のところへと向かうと、ドリンクサーバーの件を説明する。
どういうものか、司祭様も分からないようなので、とりあえず見せることにする。
私は部屋の一番後ろの長テーブルの上に、ドリンクサーバーを3台並べていく。
「サツキ様、これは何?」
子供たちがわらわらと集まってきた。
「これはねぇ、ちょっと待ってね」
左から麦茶、麦茶(砂糖入り)、梅シロップの順に並べ、真ん中の茶色いのと、薄い黄色いのは甘いことを伝える。
「はい、好きなのに並んで~」
一人一人に小さめの紙コップを渡して、蛇口を捻る。
「わ、でてきた!」
「零さないようにね」
コップを受け取り、一口飲んで、ぴょんぴょん飛び跳ねる子、続出。
麦茶以外、完売したのは言うまでもない。
子供たちと一緒に寺子屋から出てきたとき、村の入口が騒がしいことに気付く。
「しょうにんさんがきた~!」
耳ざとい、テオが声をあげて走り出す。
その後を、何人かの子供たちが追いかけていく。
久しぶりにグルターレ商会がやってきたようだ。





