第389話 梅の実、どうする、どうする?
サクランボだけではなく、びわも梅も豊作。
特に梅の実はすでに黄色く色づいている物が多く、物によっては赤くなっているのもある。
子供たちと一緒に村へと行ってみると、村の中央に大きめな籠が4つと、小さいのが1つ。4つが梅、1つがびわで、それぞれに山盛りになっている。
「それにしても、ずいぶんたくさん採れたのね」
「凄いですよね」
一応、梅の実は色ごとに分けてあるようで、3つは黄色、1つは青いままの梅のようだ。
なんでも梅の実には、中毒になる物が含まれていると聞いたことがあったので、梅の実を採る時(特に青い梅)は、つまみ食いはしないように注意しておいた(つまみ食いしそうなモリーナさんは、入れないところでよかった)。
あ、後ろの方でウロウロしてる!
「五月様、これはどうやって食べるのかしら?」
ハノエさんが黄色く熟した梅を指でつまんで見せる。
直径5cmくらいありそうな、かなり大きい粒だ。けっこう甘い匂いがする。
「うーん、簡単なのは梅酒と梅シロップかなぁ」
どっちも、瓶に材料と一緒に漬け込んでおけばいいだけだし。
ただ、氷砂糖が必要になる。これは、こっちの世界ではないっぽいんだよなぁ。
それに白くない。きび砂糖みたいな茶色い感じ。
そもそも、砂糖自体がお高い。グルターレ商会が来た時に砂糖もあるにはあったけど、小さな壺でいい値段をしてた。
そうだ、砂糖の代わりにハチミツ、使えないかな。量があるなら、ハチミツ漬けなんてのもいいかもしれない。
「そういえば、ハチミツってけっこう採れました?」
「ええ! あんなに採れるとは思わなかったわ!」
私の知らないうちに、かなりの数の養蜂箱を作って設置してた模様(エイデンの山の方)。たくさん作ったって、居ついてくれなきゃ意味がないのに、ほぼほぼ巣が出来てたらしい。
……なんか悔しい。
採れたハチミツは、村用に貯蔵している物の他、各家庭にも配ってあるらしい。
どんだけ採れたのよ。
「じゃあ、一度、作ってみましょうか」
その場にいた女性陣の目がワクワクしたものに変わる。
場所を村の東屋へと移動して、道具一式を『収納』から取り出す。道具と言っても、大したものではない。保存用の中くらいの瓶と、鍋にミニコンロ。瓶を煮沸消毒するのだ。
それに当然、ハチミツ。
鍋でお湯を沸かしている間に、黄色い梅の籠から5,6個だけ取ると、ユグドラシルの足元の池(底の方まで見えるくらい澄んでいる)まで持っていき、ササッと洗う。
水気をきった梅の実のヘタを先の尖った串でとって、手ぬぐいの上に並べて置く。
沸騰したお湯に、瓶をいれて煮沸消毒した後、しっかり水気をとったら、梅の実をいれてハチミツを流し込む。
ハチミツは漬けている間に下に沈んでしまうので、日に何度か混ぜて梅にはちみつがかかるようにしないといけない、ということを注意する。
「しっかり蓋をしめて、これで一週間から10日くらい漬けておけば、ハチミツ漬けの出来上がり」
「まぁ」
「そんな簡単に?」
ガラス瓶は、ドワーフたちが作ったのがあるようで、それでやってみるらしい。
みんないそいそと梅の実を取っていき、各自、自宅で挑戦するつもりらしい。それでも、梅の籠は黄色が1つに青が1つ残ってしまった。
残った物は私の『収納』行き。
うちにある氷砂糖や焼酎で、梅酒や梅シロップを作るつもりだけど、他にも色々ありそうなので、あっちに行った時にレシピをチェックしようと思う。
うふふ。





