第388話 くだもの狩り
山の中の桜並木で、子供たちがわいわいギャーギャー言いながら、サクランボ狩りに勤しんでいる。
ここしばらく、いい天気が続いていたおかげもあってか、サクランボがたわわに実っている。立ち枯れの拠点に植えてある、びわや梅もそうだ。
かなりの量になるので、せっかくなので手のすいている村人たちに声をかけて、くだもの狩りを実行することにした。
村の大人たちは、山裾の桜並木と、立ち枯れのびわと梅、子供たちは山の中の桜並木を任せた。基本、食べ放題。持ち帰って家族で食べてもらってもよし、とした。
一応、梅の実は、ログハウスの敷地にあるので十分なので、びわの実の分だけ、私用に分けてもらえるようにお願いした。
「あまーいっ!」
「あれ、あれ、とりたいっ!」
「まってろ、とってやる」
種族関係なく、すっかり仲良くなっている子供たち。
新しい服を着ている子供たちは、すっかり肉付きも顔色もよくなっている。ちなみに、ガズゥたちへも、上着だけ買ってきた。前に買ってあげた服は、もう小さくなって着れなくなっていて、大事にしまっているらしい。
今回、司祭様付きの大きい子たちは、司祭様と一緒に山裾の桜並木に行っているので、ちびっ子組の面倒をガズゥたちが見てくれているのだ。
「すごーい!」
「あんなたかいのも!?」
するすると木に登っていくテオとマルに、歓声があがる。
「気を付けてよね」
「だいじょーぶー」
私の注意も効き目無し。
実際、足を滑らせても無事に着地している実績があるので、聞きはしないんだろうけど。
「さつきさま、はい」
背中に赤ん坊(ローという名前らしい)を背負ったアマちゃんが、私に真っ赤に熟したサクランボを差し出した。
今年のは、去年のよりも粒が大きい気がする。よく百貨店とか果物の専門店なんかで化粧箱とかに入ってそうな感じ。
「ありがとう。アマちゃんは、食べたの?」
「うんっ、おなかいっぱいなの。それに、ふくろもいっぱい」
村に持ち帰れるようにと、子供たちに渡した大きめのジッパー付きのビニール袋は、すでにいっぱいだった。
「だー」
アマちゃんの背中にいるローが、私のサクランボに手を伸ばしてきた。
「うん? ローも食べたい?」
「あー」
さすがに種ごと渡すのはマズイ。一応、小さな前歯が生えているので、噛めはするんだろうけど、飲み込みそうで恐い。
素手で潰すのも気が引けるので、『収納』から紙皿とスプーンを出して、アマちゃんから貰ったサクランボを潰し、少しだけローの口元へ。
「キャッキャ」
「美味しかった?」
「あうー」
嬉しそうにジタバタしているローだけど、アマちゃんが大変そうだ。
でも、私が代わろうかと言っても、彼女はけして離さない。それは、彼女が村に来た時からそうだ。他の子に聞いても、孤児院の頃からそうだったようで、ローの面倒を見るのはアマちゃんの担当と決まっていたらしい。
2個ほど食べて満足してくれたので、ホッとした。
今日一日で、桜並木のサクランボの収穫はほぼ終わり。まだ残っているのもあるけれど、これは鳥たちの餌にしよう。
「さすがに、これ全部は私一人じゃ食べられなかったよね……アハハ」
目の前に集まっている満面の笑みの子供たち。彼らの持っているパンパンの袋を見てそう思った。
ちなみに、私も大きな袋3枚分収穫していたりする。
しかし、あっという間に食べきってしまうだろうな、と思う私なのであった。
+ + + + + + + +
ちなみに、五月は知らないけど、村人たちは遠慮して手を出さなかったのに、くだもの狩り以前にモリーナがこっそりつまみ食いしようとしてたのを、土と風の精霊が阻止していたりする。





