第387話 孤児たちと、買い出し
村は、いきなり子供が増えて活気にあふれている。
小さい子供たちには獣人やドワーフ、エルフという存在に忌避感はなく、むしろ興味津々だし、村人たちはただ子供というだけで、可愛がっている。
ガズゥたちも、遊び仲間が増えて大喜びだ。
さすがに13人という人数は教会で生活するのは厳しかろう、ということになり、孤児院を建てることになった。今度もヘンリックさんたち、ドワーフの大活躍だ。
その間、村の家々で預かってもらうことになった。
そもそも、獣人の村で子供といえばガズゥたちくらいで、最年少がマルだったので、マルは自分より下の子が出来て嬉しそうだ。
年長組4人は、1週間もせずに、ゲイリーさんに連れられてやってきた。
年長組といっても、私には12、3才くらいに見えたけれど、実際は14、5才なのだとか。同い年くらいの獣人の若者たちの成長具合を知っていると、だいぶ幼く感じた。
一応、冒険者ギルドにも登録をしているらしい。しかし、彼らの様子を見ても魔物の討伐なんて、無理でしょ、という感じ。実際、普段はケイドンの街中でなんでも屋のようなことをして稼いでいたらしい。
しかし、うちの村には冒険者ギルドなんてないし、彼らにお願いするような仕事も多くはない。
「俺たちは、院長先生といっしょに教会にいます」
「ええ、院長先生のお世話をさせてください!」
「マーク、ベシ―、ありがとう」
どうしたものか、と思っていたところ、彼らの方からそう言ってくれた。
確かに、いつも村の女性たちが順番でお世話していたので、彼らがいてくれるとだいぶ負担が減るので助かったようだ。
当然、寺子屋は子供たちでいっぱいになるし、文房具類は、買い足さないと足らなくなるのが目に見えている。
ということで、今日は買い出しに出かけることになった私。今回は、文房具の他に、子供たちの服も買いに行かねばならない。
ボロの服はさすがに着させ続けるわけにもいかないし、村にはガズゥたちが着ている服くらいしかない。一応、村の女性陣が服を用意してくれているようだけど、皆が皆、裁縫が得意ってわけじゃない。それも全員(17人)ともなると、中々大変なのだ。
前に保護したキャサリンやサリーの服を買った時に利用した、大型のショッピングモールまで行ってきた。子供服の専門店が入っていたので、安いのをまとめ買いしてきたのは言うまでもない。
色々見てたら、いつもホームセンターで買い物する時みたいに、カートが山盛りになっていた。17人分だもの、仕方がない……はずだ。
その後、ホームセンターやスーパーにも寄って買い物をしたら、軽トラの荷台は買った物でいっぱいになっていた。
帰りにキャンプ場の管理小屋に寄って、稲荷さんに挨拶だけしていく。
「おやおや……ずいぶんと買い物をされたようですね。うん? 子供服ですか?」
「ええ、一気に子供たちが増えちゃいまして」
稲荷さんが不思議そうに首を傾げたので、サラッと孤児院の話をすることに。
「……なんと。それは大変ですね」
「ええ。でも、村の人達がけっこう世話を焼いてくれてるんで、司祭様も助かってると思いますよ」
「なるほど(どこにでも質の悪いヤツらはいるもんですね)。ああ、でしたら、ちょっと待ってください」
そう言ってカウンターの奥の事務所の方に行ったかと思ったら、お煎餅の入ったパンパンに膨れた紙袋の手提げをくれた。
「少ないですけど、よかったら、子供たちと食べてください」
これは、きっと稲荷さん特製のお煎餅に違いない。
「……ありがとうございます」
私は素直に受け取ると助手席に載せて、家に戻るのであった。





