第380話 獣王国の拠点のメンテナンスに行く(2)
「サツキ様、どうしました」
荷台から身を乗り出しているケニーだけど、ラルルと違って、それほど顔色は悪くないようだ。
「うん、ちょっと、道をね」
後ろは軽トラが通ったので、雑草が潰れてはいるものの、すぐに戻りそう。そして前の方は、後ろ以上に草ぼうぼうだ。
「とりあえず、『ヒロゲルクン』を立ち上げて、っと」
最初の画面は、ほぼ世界地図。なにせ、ジェアーノ王国の方にも、私の敷地? が出来てしまったのだ。
前に見たときは桜並木の一本線だけで、私の土地って感じではなかったのだけれど、あの後、帝国がやらかした土地に、エイデンが私が挿し木で育ててたユグドラシルの苗木を植えたのだ。
それも1本ではない。4本。四角い土地がポツンと出来ている。
そんなに植えてどうするの、と思って聞いてみたら、なんと、ユグドラシルはなかなか根付かないらしく、4本植えても、全滅してしまう可能性があるのだそうだ。
だったら、うちの大木のユグドラシルは? となるんだけど、土地柄もあるんだけど、それ以上に、あそこまで育つと自力で根付くらしい。
何それ、怖っ!
「ほんじゃ、こっから、ここまで~、ポチッとな」
魔の森の入口から、ぐるりと帝国との国境近くまでを範囲指定して『整地』をする。
「凄いっ!」
目の前の地面が綺麗になっていくのを見て、ケニーが歓声をあげる。
「いやいや、私の力ってわけじゃないから」
そう言いながらも、ついついにやにやしてしまう。
「続けて『地固め』をして……うん、これでいいかな。よし、行くよ!」
喜び続けているケニーの肩を叩き、再び、軽トラに乗り込み拠点へと向かった。
拠点に着いてみれば、思ったよりも綺麗に使われていてホッとする。
ケニーとラルルは、周囲を見てくると出かけて行き、2、3匹のホワイトウルフたちも後を追っていった。
残ったハクと他のホワイトウルフたちは、日当たりの良さそうなところで横になっている。そしてマリンは初めての場所だからか、敷地の中をウロウロとチェック中だ。
そんな彼らの様子に、ニヨニヨしながら、再チェック。
建物や中央付近はよく利用するせいもあってか、雑草も目立たないけれど、ウッドフェンス周辺は、所々大きく雑草が伸びている場所があった。
「さてと、『整地』して『地固め』っと」
その作業、約10分。『ヒロゲルクン』、さすがです。
「あとは……薪ってどうなってるんだろう」
小屋の中をチェックすると、半分くらい残っている感じ。
「補充しておいた方がいいかな」
『薪、作るのか』
「うん、ハク、手伝ってくれる?」
『おう!』
ストックしていた木を『収納』から取り出すと、ハクが嬉々として風魔法で適当な長さにカットして、あっという間に薪の完成。
『ハク兄ちゃん、凄いっ!』
『ふふん、そうだろ、そうだろ!』
マリンに褒められ、鼻高々になるハクに、つい、クスクスと笑ってしまう。
『これをだな、後は乾燥させるんだ』
『おー』
ハクが大きな前足をふいっと振っただけで、乾燥した薪が出来上がりだ。
『ハク兄ちゃん、カッコいい!』
マリンがアイスブルーの目をキラキラさせながら、称賛の言葉を続ける。
嬉しそうに胸をはってみせるハクに、生温い視線を向ける、他のホワイトウルフと私。
そんなほのぼのしていた雰囲気の中、日向ぼっこしていたホワイトウルフたちが、急に身体を起こした。
ハクとマリンも緊張した様子で、視線をウッドフェンスの向こうに向けた。
……え、まさか、またオークとか言わないよね?





