第367話 養蜂箱チェック(2)
トンネル側の養蜂箱にガッカリしながら、今度は果樹園の方の養蜂箱のチェックに向かう。その道すがら、風の精霊が教えてくれた。
『あそこにいたハチたちは、あたらしいスをみつけたらしいよ』
なんでも、村の畑の脇に獣人たちが設置した養蜂箱に移ったらしい。それを聞いて、病気とかそういう理由でなかったことに、ちょっとホッとした。
そういえば、彼らも作るって言ってたっけ。ガズゥに聞いてみると、確かに何ヶ所かに養蜂箱を設置したそうだ。そっちでもハチが増えているのであれば、それはそれでいいことだ。
「おおお、なんか、いっぱい咲いてたわね」
いざ、果樹園に来てみれば、ブルーベリーと桑、梨が花盛りだった。
その上、ハチたちが元気に飛び回っている。今年は、去年以上に実がたくさん生るに違いない。
「さてさて、蜜の方はどうかな……ちょっとごめんなさいね~」
ガズゥに持ち上げてもらうと、桜並木の養蜂箱同様、床ギリギリまで育っていたので、さっそく採取。
「これから、どんどん花が増えていくから、マメに見ないとダメかもしれないわ」
「村の方も?」
「そうね」
村の周りはまだ荒地が多い。畑の野菜の花くらいかもしれないけれど、ハチたちの行動範囲ははけっこう広いはず。エイデンの山裾の桜並木も含まれていれば、けっこう集めてたりするだろう。
その後、果樹園からドッグランを抜け、ジャスミンの柵の方へと周る。
さすがに時期ではないので咲いてはいないものの、養蜂箱の周辺は元気なハチが飛び周っている。
さっそく調べてみると、ここも巣が大きくなっていて、もうちょっとで4段目まで到達しそうなくらいになっていたので、さっそく採取。
「ジャスミンはなくても、桜の花とかで集めてきてるのかもね」
「うん、確かに、桜並木のところのと、味? 風味? が似てるね」
採取のついでに味見もしているガズゥの言葉に、私も試しに舐めてみる。
……正直、わかんない。
一応、採取したハチミツはバケツごと『収納』してあるので、混ざることはない。ありがたいことに、花の違いのせいなのか、成分が違うようで『収納』にもメインとなる花の名前が括弧付で書かれてるので、後で食べ比べをしてみるのもいいかもしれない。
私たちは、そのままお散歩気分で牛たちのいる放牧場へと向かう。
山裾周辺は、獣人たちの家のために、大きな木はほぼ間伐したので、日差しが入ってくるので、だいぶ明るい。そのせいもあって、雑草も生えやすいともいえるのだけれど、この辺りはゲッテルさんたち毛梳きチームが、ドッグランに向かうために通っているせいか、すっかり踏み固められた道が出来上がっている。
でも、どうせなら、もう少し道幅を広くしてスーパーカブでも走れるくらいにしてもいいかもしれない。
残念ながら、優先順位は、それほど高くはないけど。
最優先は、魔の森の桜並木。そろそろ、挿し木も育ってきている。植え替え作業に入ってもいいかもしれない。
「あ、さつきさま!」
名前を呼ぶ声に、視線を向けると、テオとマルが、放牧場の柵の隙間から手を出して、振っていた。
それに気付いたガズゥが、チラリと私に目を向ける。
行ってもいいか、ということだろう。私がニッコリ笑って頷くと、猛ダッシュで柵の方へと走っていく。
「あ、さすが、獣人」
ぴょんッと一飛びで、柵を越えていった。
……私は無理なので、ぐるりと遠回りして出入り口に向かったのは、言うまでもない。





