第364話 異世界の牛と浮浪児
村の入口である門の前に、牛(?)と思われる生物が5頭。
グルターレ商会のカスティロスさんと、人間の子供2人、それにネドリが牛(?)たちとともに立っている(ちなみにネドリの姿は、姿を変える魔道具で普通の人っぽくなっている。モリーナさんが、ちゃんと仕事をした模様)。
なぜ、疑問符が付くのかといえば……私の知っている牛なんかよりもかなり大きくて、その中でも、一頭がバカでかいのだ。
小学生くらいの頃に、学校の日帰り遠足で、なんとか牧場(忘れた)に行った時に、初めて牛を見た。
いわゆるホルスタインと言われる白黒の柄の牛。
小学生だったからかもしれないが、当時はかなり大きく感じた。
あっちの牛だったら、たぶん、私の頭くらいのところに背中があると思うんだけど、今目にしている牛(?)はその倍?
色は茶色いから、あっちでいうジャージー牛っぽいといえば、ぽいのかもしれないけど、デカすぎない?
それに、このデカい牛(?)の角が……羊の角みたいに丸い(残りの4頭のうち、2頭は小さな角、残りの2頭はまだ生えていない)。
……あと、顔が恐い。
――そもそも、牛、なの? これ? 魔物じゃなくて?
「こっちの牛って……こんなに大きいの?」
見上げる大きさに、思わず呟く私。
「サツキ様! なかなかいい牛を連れてきてくれたようです!」
ネドリがすんごいいい笑顔で、一番デカい牛の頭を撫でてるよ。むしろ、自分から撫でられにいってないか。ほぼ体当たりに見えるんだけど。
そして、このデカいのは雄で、2頭が雌と、その子供らしい。
ゲハさんたち、獣人の老人チームでこの牛たちの面倒が見られるのか、若干、不安になる。
「……で、その子供たちは?」
牛も気になるところだけれど、その小さい子供たちの様子も気になる。
何せ……酷く汚れていて、ボロボロの服を着ているのだ。髪の毛もボサボサ。
兄弟なのだろうか。大きい子は、ガズゥよりも小柄な感じ。その子の手を小さい子がギュッと握っている。
しかし、弱弱しいという感じではなく、むしろ堂々としている感じ。
「この子らは……この雄牛が連れてきたがりまして」
カスティロスさん曰く、他にも、ここまで大きくない、いい牛はいたらしい。
しかし……精霊たちが、この牛を勧めてきたのだとか。
精霊が勧めてくるのであれば仕方がない、と牧場主に話をしたところ、どうもこの雄牛は、牧場の方でも手に余っていたらしい。
そんな中、この雄牛たちの集団の世話ができたのが、この子供2人。
どこの子供なのか、牧場の方でもわからず、牧場の外の森に居ついた浮浪児だったらしい。
実際、ここまで牛たちを連れてくるのに、この子供たちが役にたったらしい。さすがにこの大きな雄牛を載せられる荷馬車はないから、牧場からずっと歩かせて来たのだとか。
その間、大きなトラブルもなかったのは、この子たちのおかげだと、カスティロスさん。
――それは言外に、この子らを雇え、と言ってるわけね。
カスティロスさんの目が、笑ってる。いや、嗤ってる!?
その上、雄牛の視線が、私に向いた。
怖いんだけどっ!
「……な、なるほど。あなたたち、お名前は?」
「……マカレナ」
「……ブルノ」
なんと、大きい子は、女の子でした!





