第353話 エルフとお茶を飲む
モリーナさんの声はかなり大きくて、周囲の人の視線が突き刺さる。
少し離れた所にいたはずのカスティロスさんにも聞こえたのか、慌てて走ってきた。
「モリーナッ!」
「あ、カ、カスティロス様っ」
おおう。
普段穏やかなイメージのカスティロスさんが、すんごい恐い顔してるっ。
「サツキ様、申し訳ございませんっ……モリーナ、その話は後で私からお願いすると言っておいただろうっ!」
「はっ! そ、そうでした……」
カスティロスさんの押し殺した声、しっかり私の耳にも入ってきてますから。
後から話すつもりだったってことは、牛の話も、それがあったからなのかしら。それに、この洗濯機も、モリーナさんの受け入れのお願い?
レィティア様がそれが釣り合うって思ってだとしたら……モリーナさんって、いいとこのお嬢さんか……問題児ってこと?
周りの視線と、しょんぼりしてしまったモリーナさんが、少しばかり気の毒になったので、ちょっと場所を変えることにした。
話が村に住む、ということであれば、本来なら村長のネドリに同席してほしいところだけれど、彼はまだ、ジェアーノ王国から戻ってきていない。代理となるハノエさんを探したら、様子を察したのか、ちょうどこっちに向かって来ていた。
魔道具の店番は、隣のアクセサリーを売っているエルフが見てくれるということなので、そのままお願いして、カスティロスさんとともに、村の南側にある大きめの東屋の方へと向かう。
2対2で座っている感じが、まるでお見合い? いや、でもモリーナさんの様子からだと三者面談っぽいんだけど。
「申し訳ございません……いきなり、モリーナが」
「あー、はい。ちょっとビックリしましたが……」
とりあえず、『収納』から、お湯の入っている保温ポットと、紅茶のティーバック、人数分のマグカップを取り出した。
ジジババと毛梳きや糸を紡いだりしている間にお茶をするようになって買い足した保温ポットは、何かと便利。マグカップもスタッキングしやすいシンプルなデザイン。『収納』がなかったら、大量買いはしなかっただろうね。
お客さんに出すような紅茶でも器でもないけれど、そこは許して欲しい。
モリーナさん、保温ポットから熱々のお湯が出てきているのに興味津々のようで、目がキラキラしだしてる。
「ゴホンッ」
「はっ!」
カスティロスさんの咳払いに、一瞬で縮こまる。
「そのー、モリーナさんが、村に住みたいってことですが」
「……はい。最初は、うちの魔道具職人の長、ギャジー翁が言い出したことなのですが」
そのギャジー翁というのが、モリーナさんのお師匠さんらしい。
きっかけは、稲荷さんの持ってきた洗濯機と、グルターレ商会からもたらされたソーラーライトの情報。
そのどちらにも稲荷さんが関わっているっていうのは、エルフの中での共通認識らしい。
どうも稲荷さんは、エルフたちの中では、レィティアさんの旦那さんってだけではない存在にはなっているようで、しかし、明確にはしないってところだろうか。
異世界の神様なのに、いいのか、稲荷さん(ニヤリと笑ってる顔しか浮かばない)。





