第346話 エイデンたちの旅立ちと、買い出し
エイデンたちが旅立った。
私がエイデンと行く時は、軽トラを抱えていってもらうのに、ネドリ達はエイデンの背中に剥き出しで乗っていった。
あれ、寒くないのかなぁ、飛ばされたりしないのかなぁ、と思ったら、風の魔法で結界のような物ができてるんだそうだ。あんな不安定な場所に、よく乗っていられると思う。さすが獣人。
聞いたところによると、あの状態で何度も飛んでいて慣れているらしい。
それに飛ぶスピードが違うんだとか。
私を抱えて飛んでいる時は、気を使ってくれていたらしく、エイデン的にはゆっくり飛んでいたそうだ。
しかし、ネドリたちが背中に乗せてる時は、そんな加減をしていないらしく……ネドリ曰く、体感で2倍くらい違うらしい。その話をしているときのネドリの顔色は、あまりよくなかったので……大変なんだろうな、と察した。
しかし、例え早く飛ぶとはいえ、長時間の飛行になるだろう。あんまり無理はしないで欲しいものだ。
一方の私は、彼らが戻ってくるまでに桜の苗木の準備をしなくてはならない。
種も土もあるけれど、黒ポットの在庫が足りるのか、若干心配。
そういえば、取り寄せで頼んでいるハーブウォーターを作る道具の連絡、キャンプ場に来てたりしないだろうか。
それと、葡萄の苗。シャインマスカットとは別に、普通にワイン用に出来そうな苗とかって、売ってるのか気にはなっている。
肝心なのは、ドワーフへの貢物だ!
「うん、買い出し、行こう」
私は軽トラに乗り込み、あちら側へと向かうべく、トンネルへの道へと車を進めた。
行きがけに、キャンプ場に寄って、ホームセンターから入荷の連絡が来ていないか確認。ちょうど昨日電話があったそうでラッキー。
桜の苗木の結界の話や、玄米の話もしたかったのだけれど、タイミング悪くお客さんたちが入ってきてしまったので、さっさとその場から離れた。
ホームセンターに着いてみると、平日の割に混んでいた。天気がよくて、すっかり温かくなったせいだろうか。
大きめなカートを選んで、店の入口にあるガーデニングコーナーへ。
春植えの綺麗な花がたくさん並んでいる中、私の目的は黒ポット。
植木鉢やプランターの山のそばにあった、黒ポット。100個売りの物を3つ程買う。運ぶときには、桜の苗がある程度育った状態になるのを考えて、12cmの少し大きめの物にした。
「おや、これって」
私の視線を止めたのは、育苗トレイ。某アイドルの農家番組で、稲を育てるシーンで使ってたヤツだ。
まだ稲荷さんから玄米の話をもらってはいないものの、買っておいてもいいだろう。
いそいそとカートに3つ程載せてしまう。
「あとは、葡萄の苗だけど……」
私でも聞いたことがあるワイン用の葡萄の名前の苗は……見当たらない。
ここのホームセンターでは売ってないのかな。
「……あ、すみません!」
ちょうど目の前を通った店員さんに声をかけて聞いてみると、食用の葡萄の苗なら取り扱いがあるとのこと。ネットで葡萄専門のところでの購入を勧められた。イイ人だ。
仕方がないので、ホームセンターでは諦めた。
ふと、むしろ、あっちの葡萄を育ててみるのはどうなのか、と思いつく。
今度、エルフたちが来た時にでも、聞いてみてもいいかもしれない。
「桜並木や畑の野菜と同じように、『ヒロゲルクン』でシャインマスカットを増やすっていう選択肢もないわけではないけど……」
一応、こっそり確認はしたのだ。
ちゃんとあった。シャインマスカット。
こっちで買ってきた苗木と比べると、アプリ産の植物には、特別な効能みたいなのはない。まぁ、ブルーベリーみたいに癒しの力みたいなのはなくても、美味しく食べられれば、いいのかも、とも思う。
でも、KPが……1本で大きなログハウス並みって、高くないですかね!?
 





