第340話 異世界の植物は、やっぱり少し変わってる
サルスベリとツバキの挿し木は、だいぶ大きくなっている。といっても、私の腰の高さまでは育っていない。さすがに小さな黒ポットは可哀想なので、もう二回りほど大きいプラスチック製の鉢に植え替えた。
もうちょっと大きくなったら、山裾の方に植えに行かないといけないだろう。
ちなみに、秋に買ったシャインマスカットの苗は、立ち枯れの拠点に植えてある。
ポール代わりに、できるだけ真っすぐな枝を支柱にできるようにしてあるけれど、そのうち、ドワーフたちにお願いして棚にしてもらった方がいいかもしれない。
「さて、ずっと仕舞っておいた、ジェガの実と、ネディラの実、ブラッドシードの種っと」
ネドリからお土産でもらってた種。完全に在庫状態になってたけれど、せっかくの春なので、この機会に植えてみる。
一応、ちゃんと『鑑定』はしてある。
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▷ジェガの実の種:つる性植物
ハート形のオレンジの実が特徴。皮が厚め。
ねっとりとした食感。濃い甘さの中に、後味に少し苦味が残る。
自生地:ビヨルンテ獣王国北西部
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ねっとりっていうところと、オレンジっていうのが、マンゴーを髣髴とさせるんだけど、ハート形ってのが気になる。
苦味があるっていうのも、大丈夫だろうか。
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▷ネディラの実の種:低木
親指よりも一回り大きいサイズの青い実。
甘酸っぱい。鳥が好んで食べる。
自生地:ビヨルンテ獣王国北西部
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青っていうだけで、食欲減退すると思うんだけど……ブルーベリーだって、青といえば、青か。
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▷ブラッドシードの種
花も葉も赤い薬草。造血剤の素材となる。
自生地:ドグマニス帝国南部
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まさかの薬草の種。
造血剤って、まさに『ブラッド』って感じ。私は薬とか作らないけど、オババさんが助かるかもしれない。
しかし、真っ赤な植物ってだけで、すごく目立ちそう。
3つとも、この辺では見ない植物ってことなんだろうけれど、この辺で育てても大丈夫なのだろうか。それに、ジェガはつる性ってことは、巻きつけられるネットみたいなのか、ラティスみたいなのを用意した方がいいのだろうか。
どれも、こちらの世界の植物だし、実物がわからない。
後でネドリなり、ハノエさんなりに聞いてみよう。
ログハウスの前に、黒ポットがいくつも並んでいく。
これ、ちゃんと整理して置ける棚を作った方がいいよね。ここまで増えると、それに、植物の名前を書いておくネームプレートも必要かもしれない。
一通り、植えておきたい物が終わった私。
後は何かあったっけか、と考えている中、不意に思い出したのは。
「そういえば……はっさく!」
立ち枯れの拠点に植えた、結界や浄化も兼ねてくれている果樹の中、唯一、はっさくが実っていたのだ。
木自体、土の精霊のおかげもあって、そこそこ育っていて、普通なら、4、5年経たないと実などならないはずなんだけど、生ってるんだよねぇ(遠い目)。
私が獣王国に出かけている間に、ガズゥたちに採っておいてもらったのが、保存庫にしまってある。ハノエさんたち手作りの籠に、山盛り2つほど。
食べてもいいよ、と言いおいていたので、ガズゥたちが食べたらしいのだけれど、かなり酸っぱかったらしい。
それを聞いてから、前に調べた時に収穫後に貯蔵すると書いてあったのを思い出して、ガズゥたちに謝ったのだ。
まだ1か月は経っていないけど、いくつかを果実酒とジャムにしてもいいだろう。
少しは甘くなってるといいなぁ、と思いながら、鼻歌まじりに保存庫に向かう私なのであった。
 





