第337話 久々の買い出し スーパー編(2)
野菜や果物は、あちらで育てた物のほうが立派だったり、味も濃かったりする。
でも、当然、自分で育てていない野菜の方が多いわけで。
「お、立派なゴボウ」
「エリンギに……エノキ、しめじも買ってこう」
「水菜はさすがに育てられな……い?」
「チンゲン菜! あー、これは育てられるか……でも、買う!」
……ついつい止まらなくなるのは、仕方がないと思う。
そして、まだ植えていない季節の果物のチェックも忘れない。
いや、これがこっちに来る本題ともいえるかもしれない。
「今の時期って……苺か」
でも、苺はさっき苗を買ったので、今回はスルー。
あとはキウイフルーツとか……マンゴー?
キウイフルーツの種から育てる、とか、苺の種と共通してそう……これは苗の方が現実的な気がする。
……マンゴーかぁ。
うちの山の周辺は比較的温暖っぽいけど、さすがにマンゴーは無理だよね。
「いや……でも……ビニールハウス作ったら、行ける?」
ちょっとだけ、頭をよぎる。
そもそも、ビニールハウスを自分で作れるか、という話だ。『タテルクン』にビニールハウスのメニューはなかったはず。
ここは、ドワーフたちに相談して手伝ってもらうなり、作ってもらうのもいいかもしれない。
「とりあえず、今日はマンゴーだけ買って帰ろ」
前だったら、一人で食べるためには買うことなんかなかったけど……今日は、ちょっと贅沢してみよう。久しぶりの買い出しだもの。
3個も手にして、にへらっとしてしまったのは、許してほしい。
レジでの会計時に、自分でカートに載せていたくせに、あまりのレシートの長さに遠い目になった私。カードがあってよかった。
ちなみにカートは2台になって、店員さんに駐車場まで手伝ってもらった。
買い物を終えた私は、久々にATMで現金を下ろした。下した、といっても基本はカードで支払っているので、万が一用の現金だ。
そのついでに、通帳を記帳したのだけれど。
「……なんじゃこりゃ」
私が驚いたのは、引き落としの金額ではない。
一応、山の購入金額が一括で落ちるのは聞いていて、まぁ、凄い金額が落ちてはいたんだけれど、それよりも入金の方だ。
前回の記帳の後、2回は契約した金額(30万円)が入っていたんだけど……今回の金額は。
「120万って……」
え、こんなに!?
頭が真っ白になる。
とりあえず、これは……貰いすぎなんでは?
「……結局、税金でいっぱい持ってかれそうな気がするんだけど……まぁ、いいか」
お金はあればあったで困りはしないだろうけど、使えるのは、こっちの世界でだけ。
これは、金を使え、ということか。
もっとあっちの生活を充実させてもイイってことか。
……いや、もっと土地を買え、ということかっ!?
「はぁ」
どうせ、確定申告は稲荷さん任せ。
世間様にご迷惑をかけてなければ、いいか、と、大きくため息をつくのであった。
そして、ずっと悩まされていたスマホを解約した。
正確には、格安のコースのある会社に番号を新しく変えて乗り換えたのだ。だって、ほとんど使ってないスマホに、高い料金払う意味がない。
それでも完全に捨てきれないのは、やっぱり連絡手段がないのは不安だし、こっちの情報を得る手段も必要だと思ったから。
「これで、スッキリ」
私が満面の笑みを浮かべたのは、言うまでもない。





