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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
山での生活環境を整えてみた

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第34話 あっちの天気、こっちの天気(1)

 草刈りにかまけて、食料のストックがほとんどなくなっていることに今頃気付いた。

 水も管理小屋に行くのをめんどくさがって、ポリタンクが空っぽになってからは、ペットボトルの水を使い切ってしまってたのだ。


「一応、水場にポリタンク1個だけ置いてきたけど、すぐには貯まらないだろうし」


 あの水滴では、1日でどれくらい溜まるやら。


「もう1個、ポリタンク買っておこう。それにペットボトルも多めにだな」


 食料も買いだめしておかないと。やっぱり自給自足で畑でもやらないと駄目だろうか。それに、肉や魚といったものは、冷蔵庫がないと保存できないのは、難点だ。


「買ってきても、車に載せっぱなしか、外に置きっぱなしだもんなぁ」


 テントの生活には慣れてはきたけれど、荷物を置くための屋根付きの小屋を作るべきか。草刈りで溜まった枝は、乾燥させて炊きつけに使おうとキャンプ地の端っこに山積みにしている。これも雨でも降ったら、乾燥させた意味がなくなる。

 でも、KPは水場確保にほとんど使ってしまったし。


「また地道に貯めるしかないんだろうけどね」


 少しうんざりした気分になりながら、私は車に乗り込むと、あちらの世界へと向かった。



 トンネルを抜けキャンプ場も抜けると、田んぼの中の田舎道を走る。

 大きな国道まで来ると、点々と大きなホームセンターやスーパーが見えてくる。この風景を見ると、ほんとに自分、異世界で生活してるんだろうか、と思ってしまう。

 最近行きつけになっているホームセンターの駐車場に車を止める。


「なんだか雲行きが怪しいなぁ」


 運転席から見上げる空は、どんより曇っている。このまま雨でも降りそうだ。

 慌ててスマホで天気情報を調べる。こっちの世界に来ないと、そんなことにも意識がいかなくなるとは(ちなみに、スマホはポータブル電源で充電できた。すばらしい)。


「え、まさかの台風?」


 すでに10月になっていて、そんな季節でもない、と思ったのだけれど、まだまだ遅れてやってくるのがいるらしい。

 それも、だいぶ大きいらしい。すでに、警報が出ているところも。


「早いところ戻って、テント片づけないと……管理小屋に避難させてもらえるかなぁ」


 暴風雨の中、テントになんて、ずぶ濡れになるのが目に見えてる。

 大急ぎでホームセンターとスーパーを巡る。荷物でぎゅうぎゅうになった軽自動車は思いのほかハンドルが重い。すでにポツポツと雨が降りだしてきて、路面も濡れている。


「こんなところで事故るとか、嫌よぉ」


 そう自分に言い聞かせながら、キャンプ場に戻る

 さすがに台風の予報が出ているせいか、キャンプ場も閑散としていた。むしろ、行きに気付かなかった私の鈍感さに、自分でも呆れる。  

 念のために管理小屋に顔を出すと、そこには稲荷さんしかいなかった。


「おや、久しぶりですね」

「は、はい。あの台風が来るらしいって聞いたんですけど」

「そうみたいだねぇ」

「台風が過ぎるまで、ここに避難させてもらえませんか」

「うん?」

「いや、だから台風来るって」

「うん、くるけど……あっちも天気悪いんですか?」

「え?」

「いや、こっちが台風きたとしても、あっちは関係ないんだけど」

「……はい?」


 呆然とする私。


「まぁ、少し、落ち着こうか?」


 稲荷さんがにっこり微笑んだかと思うと、私を残して、その場を離れた。


「え、え、あれ?」


 外の雨音が、やけに耳についた。

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