第332話 オークの襲撃……?
単純に『オーク』というと、有名な某ファンタジー映画で見たような、不気味な肌の色とか、牙があったり、悪そうな顔をしている戦闘民族っぽい大男? そんなイメージだったけれど、そこにいるのは、そんな格好のいいものじゃなかった。
大型のガーデンフェンスの高さは、だいたい2メートルくらい。その上に肩まで出ている巨体。肌の色は濃い茶色で顔は……ブタ。いや、牙があるから猪か。しかし、それは猪に失礼なほどに『醜悪』な顔。
頑張って設置してきたガーデンフェンスの途中(距離にして500メートルくらい先?)で、何やらガタガタと暴れている。
「グガァァ!?(なんだ、これは!?)」
「グギャ?(どうしやした?)」
「グギャグギャ!(この壁、掴めん!)」
「グルル(本当だ)」
ガーデンフェンスの影になっているのか、他の『オーク』の姿は見えないけれど、何匹かの唸り声が聞こえる。たぶん、何か会話してるっぽいけど、まったくわかんない。
今度は『オーク』が恐ろしい形相で、ガーデンフェンスを激しくこん棒で叩き始めたみたいなんだけど、何の音もしない。
――ああ、結界か!
初めてまともに結界が機能している様子を見たかも。
思うようにいかないせいか、『オーク』の顔がドンドン赤くなっていって、怒り爆発って感じ。
「グギャギャグガァァ!(犬っころの匂いがするのに!)」
「グゥグガァァ(人の匂いもしねぇか)」
「グギャ?(あっちか?)」
ギョロリと頭一つ出ている大きな『オーク』が、こっちを見た!
「うっ」
バッチリ目が合った!
ニタァっという気味の悪い嗤いを浮かべる『オーク』。
怖気が上がるっていうのを、初めて感じた。声も出ないって、このことか。まるで金縛りにでもあったかのように、身体も動かない。
ドシンドシンッと音をたてて、デカい『オーク』がこっちに向かってくる。
――ヤバいッ!
こっちの端っこは、まだガーデンフェンス出来てないからがら空きだった。片付ける余裕もなくワタワタしている私をよそに、ビャクヤはのっそりと立ち上がる。
『五月様、我らがお守りいたします』
オオオオーンッ!
ビャクヤの遠吠えに、ホワイトウルフたちが私を囲む。
あんなのと、この子たちが戦うの!? なんて、心配した私だったんだけれど。
「え、いや、ちょっと、マジかっ!」
どこから湧いて出てきたのっていうくらい、ホワイトウルフが山から駆け下りてきたよ!
いつの間に、こんなに増えてたのっ!?
その上、遠吠えに反応したのか、拠点の向こう側にいたはずの、獣人たちが走ってくる。
「オークだっ!」
「獲物だっ!」
「ご馳走だ!」
……嬉々とした声が聞こえてくるのは、気のせいじゃないだろう。
ていうか、アレ、食料なの?
え、マジで?
肝心の『オーク』たちは興奮のあまり獣人たちに気付いていないのか、私の方へと走ってくるかと思いきや。
ザシュッ
ドタンッ
「え?」
頭一つ出てた『オーク』の、その頭が何かで切り飛ばされた。
思わず、ビャクヤに目を向けると、なんか余裕の表情(に見える)。彼が何かやったってことだろう。
「グギャァッ!?(なんじゃっ!?)」
「グギャァァァァッ!(お頭ぁぁぁぁっ!)」
ガーデンフェンスの向こう側で叫ぶ『オーク』も、驚いてる。
その後は、ホワイトウルフたちと獣人たちが……まさに蹂躙という言葉が相応しい行動を行った、ということだけ、記しておこう……。





