第324話 イグノス様の姿!?
ここしばらく体調不良のため、更新が滞っておりました。
申し訳ございません。
なんとか体調の方が落ち着いてきましたので、更新を再開しようと思います。
また、登場人物紹介のページを4ページ追加しております。
・第174話の後
・第216話・<獣人たち>の後
・第266話の後
・第316話の後
そのためにページがズレていると思われます。
随時修正をいれるかもしれないので、ご迷惑おかけいたしますが、
よろしくお願いいたします。
(おかしいところがありましたら、優しく(笑)ご指摘ください)
扉を開けると、物々しい感じで人が待ち構えている。
前に見た冒険者っぽい格好をした人たちの他に、ディテールが統一された装備をした人達がいる。若干、彼らの方がお金かけてる感じがするのは気のせいではなさそう。
しかし、皆腰が引けている様子。
エイデンがいるせい? いや、ビャクヤもいたわ。
その中から、一人、だいぶお年を召した小柄な方が現れた。
「……村の代表者でしょうか」
物腰の柔らかな感じのいい声。白い長い髪と髭。立派な白いローブではあるものの清貧な印象を受ける。まさに聖職者って感じ。視線がエイデンに向いてるのは、彼の方が偉そうに見えるからかな。
「ええ、すみません、お待たせして」
声をかけると、私の方に向けた眼差しは優し気だ。
「この土地の書類の確認をお願いした「おい、そんなことのためにわしを呼んだのかっ」」
いきなり怒鳴り声が聞こえて、そちらに目を向けると、馬車の窓から身を乗り出している頭が若干寂しいブタがいた。
「……アレはなんだ」
エイデンが呆れた声を出す。うん、私もなんだって思うよ。
「あ、あちらは王都から来ていただいた司教様で」
「うん? お前の方が高位なのではないのか?」
「は?」
「どう見ても、お前の方が力があるだろう?」
エイデンの言葉だけではなく、私が見ても、こちらの老人の方が……って思うのだが……。
「私は辺境の街の教会の司祭にしか過ぎません」
マジか。
思わず何度も見比べる。
もしかして、こっちの教会とかって、所謂、金満な感じなのか。うわー、あんなのじゃ、この書類、渡したって無理なんじゃ。
「ふん、あの騒々しいのでは話にならん。五月、こいつに書類を見せてやれ」
「え、いいの?」
「アレでは、読んでも意味がわからんだろう」
イグノス様も、さすがにアレはないと思う気がする。私はタブレットを取り出し、『収納』から書類を出して、署名の部分を指し示す。
「えーと、一応、この辺の土地一帯を買い取っているんです。購入元はこちらなんですけど……」
司祭様の困惑気味の表情に、本当に大丈夫なの? イグノス様、と思っていたら、書類から虹色の光が溢れだした。
『ピエランジェロ』
光の強さに目を閉じていると、イグノス様の可愛らしい声が聞こえた。
『お主でよかった。頼むぞ』
薄目を開けてみると、私と司祭様の間に、それもかなり上空に浮かんでいる巨大なモノが見えた。
「……遮光器土偶?」
眼鏡のような目の形が特徴的で、昔見た教科書の中でも印象に残っている。
しかし、昔見たモノとは違い、まるまると肥えて、金色に光っている土偶が浮いてる。
大きさは……某アニメ映画に出ていた巨大な赤ん坊くらいありそう……。
――まさか、アレがイグノス様!?
そもそも、なぜ、遮光器土偶!?
いや、こっちの神様のイメージってこれ!?
『(五月、失礼なこと、考えてるでしょ)』
「え」
頭の中に響くイグノス様の声。
あの眼鏡のような目では視線なんかわからないのに、見られてるように感じる。
それもジト目で。ジト目じゃないのに。
『……ピエランジェロによって承認された』
あの姿のせいで勝手に私には軽い雰囲気だったのが、イグノス様の真面目な声が空に響いたとたん、一気に厳かな空気に変わった。
手元の書類が不意に2枚に増え、新たに増えた1枚には見たことがない文字……こっちの世界の文字なんだろう。なんか微妙に紙が光ってません!?
『この契約で示された土地は五月のものとなる。これは何人たりとも奪うことは許されない。万が一、これを守らない者が現れたら、その者には神罰が下るであろう!』
周囲がピカッと一際眩しく光った。
――なんか、大事になってませんかっ!?
唖然として見上げていると、遮光器土偶があっという間にサラサラと零れるように消えていった。
途端、周囲からのざわめきが聞こえてきて、今まで完全に音が遮断されていたことに気付いた。
「おお、イグノス様の愛し子様」
「へっ!?」
司祭様が震える声をあげて、いきなり目の前で跪いてしまう。
それに合わせたように、他の冒険者や護衛の人達まで膝をついてるよっ!
「え、いや、その! た、立ってください! とりあえず、承認ありがとうございます! こちらが控えになります! 保存のほど、お願いします! ではっ!」
私は慌てて書類を押し付けると、村の門の中へと駆け戻ったのであった。
 





