表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
厳しい冬、楽しい冬

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

342/969

第313話 来訪者たちと、精霊

 飛び出してきた火の玉は、2,3メートル程飛んで消えた。


「あっぶねぇなぁ……って、おい、大丈夫か!?」


 火の玉を避けた村人が慌てた声をあげて、そのまま乗り込んだ。その様子に、他の獣人たちも馬車へと駆け寄る。


「なんて酷い」

「おい、誰か、オババ呼んで来い!」


 そう言って馬車から降りてきた村人の腕の中にいたのは、気を失っているガズゥたちと大差ない男の子。その後から抱えられてきた人がいる。男の子の母親かと思われる女性と、老人。彼らも意識はないようだ。

 この3人に共通しているのは、獣人たちに比べても着ている物は良さそうなのに、顔色が悪くて酷く痩せているということ。


「五月様!」

「う、うん」


 村の結界内へと入るのを認めると、


「ほれ、うちに運べ」


 オババさんの声で、みんな一気に動き出す。

 そんな彼らを見送りながら、私が気になっていたのは、老馬の方。

 彼? の周りに、凄い数の精霊たちが集まってるのだ。色の感じだと風の精霊の数が多い。


「どういうこと?」


 こっそり、私の近くにいた精霊に声をかけると、その子が答える前に、老馬の方から精霊たちがふよふよと私の方へと集まってきた。


『おお~、やっぱり、いとしご、いた~』

『いとしご~?』

『せいじょさまだろー?』

『どっちでもいい~』


 全然、会話にならない。参ったな、と思ったら。


『あんたたち、さつきのしつもんにこたえなさいよ』


 私の足元にいた末っ子3匹のうちのウノハナが、小さく唸りながら言った(他の2匹は、のんきに日向ぼっこ中)。


『なんだ、いぬっころ』

『いぬっころ、いぬっころ』

『いぬじゃないわ! ホワイトウルフよ!』

『やっぱり、いぬっころじゃん』


 ギャーギャーと言い合う様子に、ついイラっとして「いい加減にしなさいっ!」と、大きな声を出してしまう。


「ふぅ、いいから、説明して」

『……おこるとこわーい』

『こわーい』

「本気で怒るわよ」


 私の怒気にあてられたのか、シューンと老馬の方へと戻って固まる精霊たち。

 一方で、私のそばにいた精霊たちは呆れている。


『まったく、よそものはこれだからこまるよね~』

『さつき~、わたしたちにまかせて~』


 よそもの……ということは、あの精霊たちは、この山周辺にいる精霊とは別ということ?

 老馬の方へと飛んでいく精霊たち……あれ? なんか、うちの山の精霊たちの方が一回りくらい大きい。

 わちゃわちゃやっているのを待っていると、少しして、大きな精霊が1匹だけ戻ってきた。


「どうだった?」

『あのね、あのこたちは、とおいとこからきたんだって』

「遠いって、どれくらい?」

『わかんない。でも、もといたばしょから、ひゅんってとばされたんだって』

「とばされた?」

『そー。で、あんぜんそうなばしょをさがして、おうまさんといっしょにいたら、ここについたんだってー』


 ……まったくわからん。

 とりあえず、獣人と会話が成り立っていなかったのを見ると、言葉が違うのだろう。そのことからも、この辺の人ではなさそうなのは、わかった。


「これは、私が通訳しないと、まずい状況よね」


 彼らに何があったのかは予想もつかないけれど、なんか嫌な予感しかしない。

 私は近くにいた獣人に馬車のことを頼むと、オババの家に向かうのであった。 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ