第311話 クリスマスプレゼント(2)
「五月!」
ドンドンドンッとログハウスのドアを叩く音に起こされた。
まだ昨夜の宴の酒が残ってる感じ。なかなか起きられずに、ベッドの中で呻いてる。
異世界のお酒は、私にはキツいようで、確実に二日酔いになる。なので、普段はあまり飲まないのだけれど、昨夜は付き合いだからと飲んだのがよくなかった模様。
それでも、ちゃんとログハウスまで戻ってこれたのは、酒臭いのにちゃんとログハウスまで付き添ってくれた、ビャクヤたちのおかげ。
「さーつーきー!」
ドンドンドンッ
「う~、何よ、朝早くから」
もこもこのガウンを羽織って、ずるずると階段を降りていく。
外の明るさから、すでに太陽が高く昇ってるのがわかる。全然、朝早くなかった。
のろのろと、玄関のドアを細く開けると、エイデンが輝くような笑顔で立っていた。
「おはよう!」
朝から、眩しすぎ。目が潰れる。
「ほら、プレゼントだぞ!」
そう言って、彼の背後を見るように促されると。
「……ナニコレ」
家の前に置かれていたのは、キラキラ光る物の山。
――王冠? 金ぴかアクセサリーに、金貨? いや、金塊もある。え、宝石? 何、あの長い金属の棒は。武器? 武器なの!?
唖然となって固まる私。
「いくつかのダンジョンに潜って、とってきた。『くりすますぷれぜんと』だ!」
……どんだけダンジョン回ったの!?
自慢げにいうけど、こんなプレゼントを貰っても困るだけなんだけど。
「そ、それで、お、俺の『ぷれぜんと』は?」
エイデンがもじもじしながら恥ずかしそうに言う。
「あ」
昨日、あの場にいなかったので、すっかり忘れてた。
そして、彼のための物も用意してなかったことを思い出して、ヒヤリとする。
しかし、目の前の彼の期待の眼差しに、さすがに『ない』とは言えず。
「ちょっと待ってね」
慌ててタブレットを取りに行く。『収納』の中身を見まくって、これしかないか、となったのは。
「えーと、これ、なんだけど……」
自分用に作っていた毛糸の帽子。淡い黄色の毛糸で、セーターに合わせて作ったヤツ。てっぺんには黄色いポンポンが付いている。
淡い黄色といえばまだいいが、自分で試着してみて……ヒヨコ色って思ってしまった。
私の年齢を考えると、微妙に若作りな気がしないでもなかったが、ここで着る分にはいいかな、と思ってしまっておいたヤツ。
しかし、今すぐに渡せるのはこれくらいしかない。
あの金銀財宝の山と比べると、見劣りしまくりだけど……こんなんで大丈夫か?
「おお! すばらしいではないか!(『防汚』『破損防止』の他に、『魔法防御』までついている! うん? サイズも自動で変わるようだな。さすが五月だ!)」
嬉しそうに受け取ると、ずぼっと頭に被る。
大きめに作ったのがよかったのか、エイデンの頭が小さいおかげなのか、難なく被れた。
「どうだ? 似合うか? (五月の帽子が、似合わないわけがないがな!)」
色んなポージングして、嬉しそうにしている。
……圧倒的に似合わない。
スーパーモデルばりのエイデンに、帽子の方が完全に不釣り合いだ。
しかし、思いのほかに喜んでくれている様子に、かなりの罪悪感。
「ヨロコンデモラエテ、ヨカッタヨ」
今度、ちゃんと彼の為に、別に何か作ってあげようと強く思ったのであった。





