第310話 クリスマスプレゼント(1)
次の日から、何をプレゼントすればいいか、悩むことになる。
あげる相手はガズゥ、テオ、マルと、その家族。毛梳き仲間の老人たちや、ドワーフたちにも世話になってるし、と考えてたら、そんな短期間で全員分なんて無理じゃん、と早々に気が付いた。
なので、皆に配るのは、この前作ったアイスボックスクッキーにした。ジッパー付きの袋だと味気ないので、簡単な巾着を作ってそれに入れることにした。
せっかくなので、ママ軍団から分けてもらった赤い布に、ホワイトウルフたちの毛で作った白いフェルト生地で足跡をアップリケしてみた。緑の刺繍糸で縁取ったので、クリスマスチックになってる。それを感じ取れるのは、私だけだけどね。
あとは、ママ軍団には、ブレスレット。
ミサンガと何が違うの? と思うだろうけれど、これには、あの魔牡蠣の魔真珠を使ったのだ。
せっかくもらった首飾りだったけど、どう考えても使うイメージがわかなくて、せっかくならと分解してしまった。さすがにそれだけでは、重そうなので、シーグラスみたいな小さな魔石(青や緑っぽい物)と、あちらで買ってきていたビーズを使ってみた。なかなか、いい感じに出来たと思う。
ちびっ子3人にはどうしようかなぁ、と迷った。
ガズゥには、あの『守護の指輪』をあげたいと思っていたので、この機会に渡すつもり。でも、そうなると残りの2人をどうしようかとなって。さすがに『身代わりのブローチ』は重いか、と。それに1個しかないし。
なので、毛糸のボンボンのストラップを作ってみた。あんまり大きくないやつで、彼らの普段使いのバッグにでも下げてもらえばいいかなと。
黙々と作って、結局クリスマスイブには完成! 配ったのは翌日。
ほとんどの獣人たちはクリスマスの意味を知らないので、なぜ急に? となったようだけれど、私の地元のお祝い事なので、と言ったら納得してくれた。
「まぁ、まぁ、まぁ! よろしいんですの?」
ハノエさんの目がまん丸になって、喜んでもらえた。テオママ、マルママも喜んでもらえたので、満足。
「五月様……本当にありがとうございます」
ネドリはガズゥの指に光っている『守護の指輪』に、困惑気味。これが何なのか、わかっているみたい。
「いいんですよぉ。私なんかより、ガズゥの方が危ない目にあいそうですからね」
そして、テオとマルは、ボンボンのストラップをバッグにつけてご満悦だ。それを見たガズゥが、羨ましそうな顔。いや、うん、お揃いの方がよかったか。ちょっと失敗。
その日の夜は、村長の屋敷にみんなで食べ物を持ち寄って、どんちゃん騒ぎになったのは言うまでもない。
* * * * *
どんちゃん騒ぎをしている村の連中の様子を、少し離れたところで眺めているネドリ。その隣では、義弟のコントルと部下のドンドンが、穏やかな顔で話している。
「まさか、我々にもいただけるとは」
「各家庭に1つなんて、むしろ、こちらが申し訳ないくらいです」
ドンドンの手元には、クッキー入りの巾着袋があった。
「……まったく、五月様は、懐が深い。このような素晴らしい物を皆にまで配って下さるとは」
ネドリには、手元の巾着に付与されている『防汚』『破損防止』、そしてクッキー自体にも、微かに『回復』の力があるのが見えていた。
「いつか、ちゃんと借りをお返しせねばなるまい」
「……はい」
楽しそうに老人たちと話している五月の姿に、ネドリ達は優しい目を向けるのであった。





