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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
厳しい冬、楽しい冬

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337/1016

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 コントリア王国は冬の社交シーズンを迎えていた。

 この時期ばかりは遠方の領地の領主たちも、人脈作りのためにと、わざわざ王都にやってきて派閥の情報交換に勤しんでいる。


 王都のタウンハウスにいるケディシア伯爵も御多分に漏れず、派閥のパーティへの参加に余念がない。今日は奥方の方が、派閥の侯爵家のお茶会に参加している。

 ケディシア伯爵は、執事から渡された手紙を読むと、眉間に深い皺を浮かび上がらせていた。手紙は領都にある冒険者ギルドからのものだった。


「領都を出る時には、あんなに自信満々に言っておったくせに」


 ケディシア伯爵は、冒険者ギルドのギルドマスターに、荒地にできたという村の詳細の調査を依頼していた。

 荒地の村は、正確に言えば、伯爵の領地外にあたる。

 しかし、その地で生活できるのであれば、多少なりとも領地収入が見込める。そうとなれば、その村も領地に吸収してしまいたい、というのが正直なところ。

 ギルドマスターからの手紙からは、村の詳細を知ることはかなわず、先方には何らかの書類があるという。その書類の確認に高位の聖職者が必要と言われたとの報告であった。


「かなり大きい村になっているようだが……高位の聖職者とは……しかし、我が領のような辺境に来て下さるような方などおるまい。だいたい、なぜ、聖職者が必要なんだ」


 渋い顔の伯爵は、しばらく考えた後、領地に残っている義弟宛に手紙を書き出した。ただの確認であれば、領都にある教会の司教であっても問題なかろうと。


 


 ケディシア伯爵は奥方とともに、エクスデーロ公爵家の夜会に参加していた。

 穏やかな空気の中、楽し気な音楽が流れ、中央では若者たちが華麗に踊っている。

 そんな光景を目の端に入れながら、ケディシア伯爵は男たちと政治や経済の話を、奥方は女たちとファッションや美容、王都での最近のゴシップなど、絶え間なく話していた。

 そんな中、公爵自らがケディシア伯爵たちの会話の中へと入っていく。


「伯爵、久しぶりだな」

「はっ! ご無沙汰しております」

「そういえば、少し前に伯爵の領都に寄らせてもらったんだよ」

「い、いつ、いらしていたのですか」


 サッと青ざめるケディシア伯爵。そのような報告は、彼の元にはあがってきていなかった。


「ふふふ、ちょっと、知り合いに会いにね。なかなか立派な街だった。さすがだね」

「ほお、さすがケディシア伯爵ですな」

「公爵! よろしければ、次は我が領にもぜひ!」


 実際は、公爵が誘拐されていたキャサリンを迎えに行った帰りに寄っただけだが。お忍びということと、急ぎ王都に戻らねばならなかったこともあり、伯爵家に寄らずに、王都へと戻ったのだ。


「そういえば、『聖なる山』の辺りは、今はどうなっている?」

「え?」

「いや、あの周辺に私の知り合いがいてねぇ」

「あ、あのような荒地にですか!?」


 伯爵は一瞬、荒地の村のことを思い浮かべる。


 ――まさか、公爵家の関係者が?

 

「ああ。娘が大変世話になっていたんだよ。また機会があれば、伺いに行きたいと思ってるんだが……その際は、伯爵のところにも寄らせてもらうよ」

「は、はいっ。その際は、お声かけ下さいませっ」


 片手をあげてにこやかに去っていく公爵に、深々と頭を下げる伯爵の額には、冷や汗が光っている。


 ――マズい、マズい、マズい!


 夜会はまだ続くのだが、伯爵は慌ててタウンハウスに戻ることになった。

 馬車の中では、不機嫌になった奥方が、延々とブツブツ文句を言っているが、伯爵はそれどころではない。


 ――出がけに手紙を出してしまったが、まだ間に合うか。


 腕を組んで目を閉じている伯爵ではあったが、内心、猛ダッシュしてタウンハウスに戻りたい思いで一杯であった。 

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