第305話 贈り物を鑑定する
雨の中わざわざ来てくれたガズゥたちには、買いだめしておいた飴をジッパー付きのビニール袋につめて、3人それぞれに渡した。帰る前に1個ずつ、それぞれの口に放り込む。目がキラキラしちゃって、可愛すぎ。
びしょぬれになっていた靴とコートがすっかり乾いているのは、風の精霊のおかげだろう。効き目があるかわからないけど、防水スプレーをかけてあげた。少しはマシであればいいんだけど。
「この傘さして、気を付けて帰るのよ?」
「はいっ!」
大きめな傘の中、3人がくっつきながら帰っていく姿が、可愛すぎだった。 彼らのそばに水と風の精霊たちが飛んでいるのが見えた。きっと、無事に帰れるはずだ。
ログハウスに戻り、パッチワークのマットの上に置かれたモノたちに目を向ける。
――林檎もどきに、糸の束、アクセサリー類。
これら全てがダンジョン産。絶対、何かしらのいわくがありそう。
「当然、『鑑定』しとくよねぇ」
私はタブレットを取り出して、それぞれ『鑑定』してみる。
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▷ワサの実
爽やかな香りとともに、甘味の強い果物。
ダンジョン内で育ったため、通常のサイズよりも大きい。
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うん、普通に果物か。これ、ジャムとか作れるかな。後で味見してみよう。
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▷クリスタルスパイダーの糸
ダンジョン内に生息するクリスタルスパイダーの糸。
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……蜘蛛の糸?
え、普通に絹糸みたいだけど。別にベタベタしないし。
これ使えば、滑らかな布とか織れたりする?
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▷魔真珠の首飾り
ダンジョン内の海に生息する魔牡蠣でのみ育つ真珠を使った首飾り。
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粒が大きいし、艶があって綺麗なんだけど……好みじゃないんだよなぁ。
ていうか、ダンジョンの中に海があるの!?
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▷守護の指輪
使用者の防御が少しだけあがる。
▷身代わりのブローチ
使用者の危機に1回だけ身代わりになる。
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なんというか、ゲームっぽい。『防御』って言われてもなぁ。『身代わり』とか、私なんかよりも、ダンジョンに潜ってるガズゥたちの方が必要なんじゃない?
しかし、せっかくエイデンがダンジョンから持ってきたものだし、雨の中、わざわざガズゥたちが持ってきてくれた物。単純にKPに変換しちゃうのもなんだし、『売却』するのも失礼な気がする。
「でも、好みのデザインじゃないんだよなぁ」
首飾り、指輪、ブローチ共に、手にしてみるとけっこう重い。
首飾りは絶対肩こりになりそうだし、指輪に至っては、『防御』よりも武器になりそうなゴツさだ。
迷いに迷って、ベッドサイドに置いているシェル型の皿の上に、他のアクセサリーとともに置いておくことにした。
クリスタルスパイダーの糸は、今すぐに何かを作れる感じでもないので、そのまま『収納』。
残ったのはワサの実。一人では食べきれそうもないくらい。ガズゥたちに持たせようとしたら、彼らもすでに貰っているんだとか。どんだけ採ってきたのよ、エイデン。
仕方ない。半分は『収納』して、残りはジャムや果実酒にでもしよう!
 





