第299話 Win Win
村の中央で広げられる品々に、村人が恐る恐る覗き込む。何せ、相手がエルフだ。やっぱり彼らの匂いはダメらしい。それでも、必要な物などを買わないわけにもいかないのだろう。それぞれの気になる商品の前に集まっている。
そんな様子を、少し離れたところで焚き火にあたって見ているのは、護衛の人々。
前回同行していたエルフの護衛たちは、村の変わりように、驚いてはいたものの、すぐに落ち着いてしまったが、今回初めて同行している人族と獣人の護衛は、きょろきょろと周りが気になるらしい。
「あの、お嬢さん、ちょっといいか」
人族の30代くらいの護衛が声をかけてきた。
お嬢さん、だなんて……そんな風に呼ばれることなんてないので、ちょっと気分がいい。
「なんでしょう?」
「ここは、その、どういった村なんだ?」
「どういった、と言われても」
「いや、すまん。この辺は、前は荒地で人が住むようなところじゃなかったはずなんだが」
「……そうですね」
どこまで話していいものやら。
ふと、前にエルフたちが来た時のことを思い出す。あの時は、姿を変えて警戒心丸出しだった彼らが、今回は姿も変えず、その上、エルフたちだけでなく、獣人や人族の護衛を連れてきている。
とりあえず、エルフたちに信頼されている相手、ということなんだろう。
「ここは狼の獣人が中心の村、ですね」
「ああ、それは見ればわかるが……いったいなんでまた……」
「まぁ、そこは村長にでも聞いてください」
聞けるものならね、と、心の中で呟く。
なにせ、護衛でついてきていた獣人たち(熊系とか虎系っぽい。皆、身体が大きい)が、ネドリを見て、顔を強張らせてる。彼らなりに何かを察しているのかもしれないが、この場では話していないようだ。
私は軽く会釈をして護衛たちから離れると、若者エルフの元へと向かう。
せっかくの機会なのだ。ママ軍団が作った物や、魔物の毛皮の買取もお願いできないか、と思うのだ。
若者エルフの快諾を得られると、ママ軍団はこの前作ったミサンガをいそいそと並べだした。
「おや、随分と色鮮やかな……ブレスレット、でしょうか」
「ミサンガっていうのよ」
「ほお」
興味津々となる若者エルフの様子に、内心、ガッツポーズ。ママ軍団も目をキラキラさせている。
結局、1本2000G。完売。
――え、いいの?
元値を考えたら、1本200円か300円くらいでもいいくらいなんだけど。
こっちのお金の価値の単位が同程度だったとして、高すぎないか?
使っている毛糸はこっちにないものだから、いいのか?
え、本当にいいの?
ぐるぐる考えが渦巻いたけれど、高く買ってもらって、その分、商品を買えば、お互いにWin Winな感じになるだろうと思うことにした。
結局、ミサンガ以外にも魔物の毛皮や、オババさんのお手製のクスリ(ユグドラシルの葉入り)など、思いのほか高額になっててびっくり。特にオババさんのは、護衛の人達が挙って買っていった。
一応、前に頼まれたユグドラシルの葉は、乾燥させた物を麻袋に入れて渡した。これはガズゥたちが気が付いた時に集めたものだ。
あの時は、枝付きを求められたけれど、エイデンに相談したら、枯れ葉で十分だ、と言われたのだ。念のため、オババさんにも聞いて、ポーションにする程度であれば、青みのある葉であれば作成可能とのことだったので、ガズゥたちにお願いしておいたのだ。
「ああ、祖父が頼んでいたものですか」
苦笑いをした若者エルフだったが、それ以上何も言わず、お金を払ってくれた。
その金額、1袋に30万G。私が唖然となったのは言うまでもない。





