第298話 毛梳きと、エルフ商人の再訪
木枯らしが吹き始め、いつ雪が降ってもおかしくない季節になってきた。
ダンジョン組は、エイデンの鱗を使った魔物除けのおかげで、攻略が進んだという話を聞いた。さすがに、村とダンジョンを往復するのは厳しいので、ダンジョンの入口付近に、簡易的な宿泊施設を建てたらしい。
ガズゥたち、ちびっ子は、相変わらず、浅いところだけの日帰りだ。
そこはママたちが許さなかった。仕方がないね。
最近の私は、ドッグランのそば(水浴び場とは反対側)に作業小屋を建てて、そこでホワイトウルフの毛で毛糸を紡ぐのに勤しんでいる。
ビャクヤたち家族に限らず、他のホワイトウルフたちも毛を梳いてやると喜ぶので、それがどんどん溜まってしまったのだ。
そして、この毛梳き、今では村人の中のご老人たちも参加していたりする。
ブラシは木工が得意なドワーフ(エトムントさんというらしい)が作ってくれた。ありがたや~。
ホワイトウルフたちも気持ちがいいのをわかってるせいか、いそいそと集まってくる。ドッグランに併設の厩舎の周りでは、ホワイトウルフが日向ぼっこしながら、毛梳きを待っている。おかげで、梳いた毛の溜まること、溜まること。
あまりに多いので、KPにしちゃってもいいかな、と思ったのだが、毛梳きの老人たちが糸車に興味を示して、ついには、糸車もドワーフのエトムントさんが、同じようなものを2台作ってくれた。
ちなみに、ちゃんと『収納』してゴミを取り除いて綺麗にした毛は、作業小屋に山積みになっている。
これでどれくらいの毛糸ができて、編み物が編めるかはわからないけれど、この冬の手仕事の一つになるのは、確実だ。
ただ、色が白一色なので、染色とかできないのかな、というのが、今一番気になるところではある。
そんな風に、みんなでモフモフに盛り上がっているところに、エルフの行商人が再びやってきた。
ただし、今回は、あの胡散臭いエルフはいなくて、彼の孫と言われていた若いエルフが5台もの荷馬車を率いてやってきた。
村の門の前の道を、5台もの荷馬車がずらーっと並ぶのは、なかなかに壮観。護衛もエルフに限らず、人族や獣人もいるようだ。
村人たちは、エルフだとわかるのか、遠くから様子を窺っている。私の傍にいるのは、村長のネドリだけだ。
「お久しぶりです」
「今回は、いらっしゃらないんですね」
「あはははは」
言外に胡散臭いエルフのことを匂わせると、笑って誤魔化す若者エルフ。稲荷さん経由で何らかの話が奥さんの方にいったのかなぁ、とチラッと思う。
若者エルフに、ネドリを紹介してから、どうしようか、と考える。前回はエイデンもいたのもあって、すんなり入れてしまったけれど、今はいないし。今回は、人数も多いし、彼らを村に入れていいものか。チラッとネドリへ目を向けると、小さく頷く。ネドリがいいのなら、彼らに任せるのがいいだろう。
「今回は随分多いんですね」
「ええ。前回は取り急ぎでしたしね。それに、冬場は我々も動かないものですから。この機会に多めにと思いまして」
「わかりました。問題を起こすようなことだけはないように、他の方にも注意してください。ご存知の通り、彼のご機嫌が悪くなるでしょうから」
私がにっこりと笑うと、若者エルフも笑顔で「わかりました」と応える。
さすが、胡散臭いエルフの孫だわ、と思いつつ、村の中へと入っていく馬車を見送るのであった。





