表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
厳しい冬、楽しい冬

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

319/973

第293話 完成品と糸車と、厄介ごと

 綺麗に片付いたテーブルの上には、ロウソクとハンドクリームが並んでいる。

 紙コップから剝きだしたロウソクを掌に載せて、じっくり見る。ちょっと上の部分が歪んでるのはご愛敬。当然、柄などないシンプルなもの。

 ロウソクに火を着けてみると、ジジジジッという音とともに、小さな火が灯った。


「おお、ちゃんと燃えた」


 匂いはほのかに甘い匂いがする……気がする。気のせいかもしれないけど。

 昼間にロウソクを灯しても、雰囲気はイマイチ。これは夜にでも、もう一度部屋の中でやってみるつもりで、一旦、火を消す。

 今回は紙コップを使ってやってみた。そういえば、ネットで調べた時、何度もロウに紐を浸して、太くしていくとかいう作り方を紹介したページもあった。すごく手間暇かかりそうだけど、試してみてもいいかもしれない。


「あとはハンドクリームだけど……ん、匂いはちゃんとしてる」


 1個1個手に取り、匂いを確認。個人的に好きなのはスイートオレンジ。指先でクリームをとり、そのまま手の甲にのせて伸ばしてみる。もう少し、べたっとした感じになっちゃうかな、と思ったけれど、初めてにしては上手くできたと思う。

 あとは、アロマオイルを自作できたらいいんだけど。確か蒸留器とかで作るっていうのは見覚えがあるんだけど……次にあっちに行った時にちゃんと調べてみよう。

 色々と中途半端な知識しかないのは、なんとも歯がゆいものだ。

 ハンドクリームの匂いを堪能していたところに、トンネル側の道の方から車がやってくる音が聞こえてきた。ここに車で来るのは稲荷さんしかいない。




 私が木の門を開けると、軽トラックが入ってきた。


「お待たせしました~」


 暢気な稲荷さんの声に、私も笑みが浮かぶ。

 軽トラの後ろの荷台には、青いビニールシートに覆われた荷物。


「いやぁ、知り合いのおばあさんが入院しちゃってまして、連絡つかなかったんで遅くなりましたけど」


 軽トラから下りてきた稲荷さんは、荷台に乗って、荷物を抱える。けっこう大きい感じがするのに、稲荷さんはひょいっと飛び降りると、テーブルの脇に下ろした。


「もしかして」

「そう、もしかして、ですよ」


 ニヤニヤ笑いながら、ビニールシートをむくと、中から現れたのは。


「糸車、お持ちしましたよ」

「おお……」


 かなり使い込んでいるようで、木目が黒っぽくツヤツヤしている。自転車の車輪のような車の部分はスムーズに動く。足踏みするペダル? みたいなのも問題なさそう。


「詳しい使い方とかは、私は教えられないので、ご自身でなんとかしてくださいね」

「は、はい」


 どうやって使えばいいのか考えつつ糸車をいじっていると、稲荷さんが不意に門の方へと目を向ける。

 なんだろう? と釣られて目を向ければ。


「さ、五月様っ!」


 真っ青な顔をしたガズゥが、稲荷さんの軽トラの後ろから現れた。


 ……なんか、見るからに厄介ごとって感じるのは、私だけではないはずだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ