第292話 ミツロウ作業と、げんなりする話
今日はミツロウで蝋燭とハンドクリーム作りに挑戦だ。
先日、スーパーカブのガソリンを入れるついでに、今年最後の買い出しに行ってきたのだ。スーパーカブなので、そんなに多くの買い物はできなかったけど、ホホバオイルやココナッツオイルなどの植物オイルや、何種類かのアロマオイル等も買ってきたのだ。
作業はいつものログハウス前のテーブル。真っ青に晴れた青空の元、作業開始だ。
「まずは、蝋燭~」
ボールに熱湯を入れて、その中にミツロウを入れた耐熱の小さいコップ。ミツロウが溶けるのを待ってから、ゆっくりと攪拌する。完全に溶けたところで、ロウソクの芯になるタコ糸を浸して、割り箸に挟んで乾かす。
乾いたところで、紙コップに割り箸を渡して、紙コップに溶けたミツロウを流し込む。あとは固まるのを待つだけだ。紙コップは5個。ミツロウを入れてから、ドライハーブにしたラベンダーを入れればよかった、というのに気付く。次に作るときは、入れるのを忘れないようにしようと心に誓った。
次はハンドクリーム。こっちには、ミツロウの他にホホバオイルを入れる。溶かすところまでは同じで、容器は安売りでまとめ買いした、小さなアルミの容器。結局、容器5個分になった。
「そろそろいいかな」
少し冷めて固まりだした頃に、5個のうち4個に、それぞれアロマオイル(ローズ、ラベンダー、ミント、スィートオレンジ)を1滴ずつ垂らして、かき混ぜる。
あとは、固まるのを待つだけなので、テーブルの後片付けをしながら、この前のケニーたちの話していたことを思い出して、げんなりした気分になる
ケニーたちが戻ってきた夜。最初は賑やかに宴が始まった。
――獣王国のお姫様が、また騒ぎ出した。
その話が出た途端、一気に空気が重くなった。
こっちの世界の貴族とか王族とかのことはよく知らないけど、面倒ごとになりそうな響きなのはケニーたちの様子から、私でも察することができる。
だって、ゴシップのような話だったら、酒のつまみになるようなことだろうに、ケニーたちが戻ってきた祝いの席なのに、なぜかどんよりした空気だったのだ。
最初は、詳しく聞いていいのかわからなくて、聞き耳をたてるだけにしたけれど、それでわかったのは、『お姫様』というけれど、我儘姫な上に、どうも最近、出戻ったらしく、けっこうな醜聞になったらしい。
あっちでは一般人の離婚なんて、よくある話ではあるけれど、王族ともなると、まったくないわけではないけど、多くはない。それに似たようなレベルなのかな、と勝手に推測している。
それにしても、なぜ獣人たちがみんな暗い顔になってるのか、それの方が気になる。仕方なしに、どういうことか、と聞いてみればネドリ絡みらしい。
……モテる男は辛いね。
と言うだけだったらよかったのだけれど、その『お姫様』はその程度では、済まないお方だったらしい。色々とちょっかい(というレベルでもないそうだ)をかけてきて、異議を申し立てたら、それを防ぐためにと嫁に出されたそうだ。王家に異議申し立てして通ってしまうネドリって何者? と思いつつ、結局、『お姫様』は戻ってきてしまったんだとか。
戻ってきた、だけだったらよかったんだけど。
ネドリの村がなくなったことが既に王都にまで届いていたらしく、その情報を求める依頼が冒険者ギルドに出ていたらしい。その『お姫様』の名前で。
 





