第289話 ママ軍団、やる気満々
ガズゥたちと村へと行くと、ママ軍団が出迎えてくれた。
「まぁ、ハチミツ! 頂いていいんですか?」
「随分と綺麗な瓶ですね」
「キラキラといい色ですわねぇ」
3本あったハチミツの瓶のうち、2つをガズゥママのハノエさんに渡す。
村人全員分にはならないので申し訳ないのだけれど、これからの相談のための賄賂だ。
「それで、ちょっとご相談があるんですけど……」
「ネドリは、狩りに出ているんですが、私がお話を聞いても大丈夫です?」
ネドリがいない時は、村長の妻のハノエさんが責任者になる。
そのせいか、少し心配そうに聞いてくる。
「母さん、五月様は『ようほうばこ』を作って、ハチミツを集めてるんだよ!」
「ハチミツ!」
「あまい!」
「『ようほうばこ』?」
ガズゥが、勢いよくハノエさんに話し出す。ハノエさんはうんうんと頷き、ガズゥたち同様に、段々とキラキラした目に変わっていく。
やっぱり、ハチミツって人気よね。美味しいもの。
ミツロウもとれると話をしたら、やる気が凄くて、私の方が腰が引けるぐらいだ。それだけ貴重ということなのだろう。
「い、一度、見本を見て頂いた方がいいですかね……でも、今ある養蜂箱は全部結界の中なのよね……」
見本というだけなら、『タテルクン』で作ってみせてもいいけれど、実際、ハチの巣の入っている物を見せたほうが、わかりやすいはずだ。
さすがに、立ち枯れのところから運んでくるのは、重いし、面倒だ。なにせ、残念なことに、『収納』の中には生き物は入れられないのだ。
一番、結界の境界に近いところに置いてあるのは、ジャスミンの柵のところなので、その場にいる全員で、養蜂箱のところまで歩いていくことにした。
桜並木の道の入口、そのまま登っていけばログハウスに着く道の門を開けて中にまわりこむ。ジャスミンの花は咲いてはいないものの、ガーデンフェンスに巻きついている。
「ちょっとの間、借りるわね?」
そばを飛んでいるハチたちに声をかけると、しずかに箱をあげて、門のところで待っているママ軍団のところへと持って行く。
「まぁ! 随分とぎっちり入っているのですね」
「中は、こんな風になっているんですねぇ」
「それに、全然、ハチが刺してこない……」
……それは、私がいるからだろうなぁ。
もし、獣人たちも養蜂を始めるなら、ハチたちと要相談だわ。
ママ軍団は、養蜂箱の形を見て、これだったら自分たちでもできそう、と話し出す。実際、私でも作れたしね。
「門のところから村の方向に向かって、椿の木が植えてあるんです。もうちょっとしたら花が咲くだろうから、もしかしたら、ハチたちが集めるかもしれません」
それを聞いて、俄然やる気になるママ軍団。
ガズゥたちに、手が空いてそうな者がいれば声をかけて、材料や工具を持ってくるように言うと、ガズゥたちは、嬉しそうに返事をすると、あっという間に村の方へとかけていく。





