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ここは、五月達が以前訪れた街である。『血気団』がボロボロの格好で街に戻ってきたかと思ったら、ドラゴンが現れたと、報告をしてきたものだから、冒険者ギルドでは大騒ぎになっている。
「最近はホワイトウルフの話を聞かないと思ったら、今度はドラゴンだと? なんだって、俺の代になって面倒な話ばかり持ち上がるんだ」
ガツンッと自分の机を蹴りつける冒険者ギルドのギルドマスター。
「ギルマス、落ち着いてくださいよ」
青白い顔でオロオロしているのはサブマスター。
このコントリア王国でドラゴンの姿が見られたなんて話は、ここ何百年もなかった。あったとしても、精々、ワイバーン程度。あれをドラゴンと勘違いするようなAランク冒険者はいない。
「で、ドラゴンはこっちに向かってるのか」
「い、いいえ、その姿を確認したのは『血気団』の連中だけでして」
「は?」
「獣王国の国境近くの荒地でドラゴンと遭遇して、馬に逃げられたそうです」
「なんだ、あいつら、そんな場所まで行ってたのか」
「ホワイトウルフを探していたらその辺にまで行ってたらしいです」
チッと舌打ちをうつギルマス。『血気団』はパーティ名の通り、脳筋な連中ばかり。一度、これだと思った依頼は達成するまで諦めない。
「とりあえず、奴ら以外からの報告はあがってないんだな」
「はい。念のために、3組ほどのパーティに探索を依頼しました。その報告待ちです」
この街には、ドラゴンを討伐できるランクの者などいない。そもそも、討伐が可能なのかもわからない。
彼らにとって、ドラゴンと接触することなく過ぎ去ってもらうのが一番なのだ。
「……万が一もある。領主様にも報告だけはしておくか」
獣王国の国境までが領主の管轄する地域となっている。住んでいる者もいない荒地ではあっても、危機があるなら、準備をしなければならない。
「そういえば、隣の男爵領ではスタンピードの予兆らしきものがあったと聞くが、その後、どうなったか聞いてるか?」
「獣王国から流れてきていた魔物たちですね。かなりの数だったようですが、なんとか冒険者たちで押さえ込めたようですよ」
「そうか。まぁ、こっちまで飲み込まれるような規模でなかったのならいい」
ギルマスたちは知らない。
その魔物の多くを、獣王国内でビャクヤたちやエイデンが間引いていたことを。
探索に出ていた冒険者たちが戻ってきた。
結論からいえば、ドラゴンの影すら見当たらなかったとの報告が上がってきた。『血気団』の連中が嘘をついた可能性もあったが、そこまで器用な奴らではないだろうとは、ギルマスの判断。
ドラゴンの存在は事実だったとしても、緊急事態ではなくなったことだけは確かなことに、ギルマスの肩から力が抜けた。
ただ、その報告の中に、『聖なる山』周辺に、村らしきものができているというものがあった。
ギルマスたちは首を傾げる。そもそも『聖なる山』周辺は荒地な上に、高ランクパーティーで攻略しなければならないような強力な魔物が多いと言われている。
そんな場所に住むような者たちがいるというのか。
『聖なる山』周辺は空白地帯。
明確にどこの国とも、誰の所領とも、決まってはない。
そもそも、禁域となる場所に、人が住んでいるというのが問題なのだ。
「また別の面倒事かよ」
ドラゴンの報告とともに、厄介なことも伝えなければならないことに、ギルマスはげんなりした顔になった。
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ちなみに、この大陸の中央に大きな山脈があり、その南西の端にあるのが五月の山。
トンネルのあるのは山脈の中央に近いところの山。
以前盗賊どものアジトがあった山は、五月がこの前買い取った獣王国に接している山の隣。帝国寄りにあります。
強力な魔物はホワイトウルフたちによって駆逐済みです。
むしろ、彼らが、強力な魔物ですね。





