第283話 冬ごもり前の買い出し(1)
久しぶりにあちらでの買い物である。
キャンプ場を抜けていく道は、すっかり紅葉していて、見事に真っ赤。秋を実感する。
考えてみれば、紅葉しているのは私が植えた桜や柿くらいで、あちらの山では常緑樹が多くて、緑ばかりで季節感が薄い気がする分、『ザ・秋』って感じがする(発音はスルーで)。
「うっ、思ったより寒い」
ホームセンターの駐車場に着いてドアを開けた途端、冷気が入ってくる。念のために持ってきていたハーフコートを慌てて羽織った。
去年の冬は縫い物なんかをしたりして冬を過ごしたけれど、今年はできるなら糸紡ぎに挑戦したいんだけれど……ネットで調べてみたら、こっちで買うと、高い!
ミサンガを作った時に用意したビャクヤの毛糸は、手作りのスピンドルっていうのを使って簡単に紡いだけど、昔ながらの糸車みたいなのを回すのにも憧れがあるというか。
しかし、当然、ホームセンターには糸車は売ってなかった。
仕方がないので、糸車の構造を調べて、コンビニで図面や画像をネットプリントしてみよう。私の自作っていうのは難しいかもしれないけれど、職人チームにお願いしたら、出来たりしないだろうか。
もしお願いできるんだったら、ついでに、機織り機なんかもどうだろう。なんか、ワクワクしてくる。
日常の生活用品を大きなカートに山盛りに載せる。一冬を越すとなったら、それ相応に買い込んでおかないと、と思う。買い忘れがあったら、もう1回くらいは来れるかもしれないが、何事も用心するに越したことはない。
他に何かないだろうかと、あちらこちらを見ていた時に、目に入ってきたのに気付いて、立ち止まってしまった。
ハチミツの分離機だ。
「そういえば、ハチミツってどうなったかな」
養蜂箱を4か所に置いて、ハチは飛び交ってはいたけれど、中までは確認してなかった。
「そろそろ、分けてもらってもいいくらいにはなってるよねぇ?」
視線を再び、分離機に向ける。
「よし、買うか」
カートの下に分離機の入った箱を載せると、他にもないかと動き出す。
ホームセンターの外にある園芸コーナーに向かう。
パンジーやビオラ、クリスマスローズにシクラメンと、可憐な花の苗が並んでいる。
ログハウス周辺に、そういう花を植えてみるのもいいかもしれないが、どうしても食い気を優先してしまう私。
果樹園の他にも、いくつもの果物を植えたけれど、他にも美味しそうな果物が生るような苗木はないだろうか。スーパーで種のある果物を買って、種から育ててもいいけど、種のない果物もある。たとえば、シャインマスカット。
シャインマスカットに限らず、葡萄を育てるのもいいかもしれない。ジュースもだけれど、ワインとか作れたり……しないか?
もしかしたら、獣人やドワーフたちだったら作り方を知っているかもしれない。
そもそも、そんな量になるほど葡萄が生るかわからないけど、育ててみる価値はあるんじゃないか。
葡萄の苗木を探したら、まさにシャインマスカットの苗木が5本ほどあったので買ってみた。戻ったら早速、植えてあげないと。
場所はどこがいいだろう?





