第282話 冒険者たちの出立
目の前にはケニーたち、若手冒険者たち。朝が早いせいか、吐く息が少し白い。
「これ、よかったら付けてって」
昨日、夕方から作り始めたのだけれど、気が付いたら、日付が変わるころまで夢中になって作ってしまっていた。
「ありがとうございます!」
嬉しそうな笑顔が眩しい。
元は、まとめ買いした安い刺繍糸に、ビャクヤたちの毛で作った細めの毛糸を混ぜて織り込んだ物なんで、そこまで喜ばれると逆に罪悪感。
ただ、前に作った時は気休めでも、何かしらお守りになればと思って作った物だったんだけど、今回は作った後に、1つだけ、なんとなく『鑑定』してみた後、そっと画面を閉じた。
▷聖女の想いの籠ったミサンガ(防御力アップ。聖獣の護り付き)
なんじゃ、そりゃ。
聖獣はビャクヤのことを指しているのだろうとは思うけれど、今の私、聖女とかじゃないんだけど。そんな、ご大層な力とかって、ないよね? あるのはタブレットの力だけのはず!
もしかして、キャサリンたちやガズゥたちに渡したのも、何かしら効能があったりするのかな、とは思うものの、悪いものでないのであればいいか……と思うことにした。
「ほら、これもだ」
ネドリが若者たちに革製のリュックサックのような物を渡すと、若者たちから歓声があがる。いそいそと自分たちの使い古した布のバッグを、リュックにしまい込んでいる姿は微笑ましい。
「あれ、ガズゥたちが五月様からいただいたバッグを参考に作ったんです」
「両手が空くから便利ですよね」
「そうそう。背中の防御にもなりますし」
革は布なんかよりも簡単に手に入るし、普段使い慣れている素材のせいなのか、私なんかよりも上手で頑丈そうなんだけど。むしろ、私に作ってって言いたいくらい。
まだ新しいからか、明るい茶系の色合いだけれど、使い込んだらいい感じに変わるかもしれない。
「ケニー、あと、これはお前に預ける」
「え、いいんですか」
何を渡しているのかと思ったら革製のウエストポーチのような物だ。入ってもせいぜいお財布とかスマホくらいしか入らなそうだけど。
「これで、冬の間の食料の買い出しを頼む。金も中に入れてあるから、それでなんとか遣り繰りしろ」
「わかりました」
言葉の感じから、あれは私と同じ『収納』の機能のあるものだと想像する。
そういえば、エルフたちが来て買い物をしてから1か月以上になるが、再訪はまだ。一応、村で貯蔵していた物(多くは麦)はあるものの、冬の間ここだけでなんとかするには、厳しすぎるだろう。
「ケニー殿、よろしく頼みますぞ」
ヘンリックさんも個別で何か頼んでいるようで、小さな革の小袋を渡している。鍛冶のための素材か何かかもしれない。
「あ、そうだ。忘れてた」
素材といえば、ビャクヤたちの山の上の巣を作るときに『穴掘り』で手に入れた、岩。『収納』の余裕がなくて、途中でKPに変換しちゃったのだけれど、あれ、何かに使えたりするんだろうか。
雪が降る前に、もう一度、ビャクヤたちの巣の様子を見に行くのもいいかもしれない。
「じゃあ、行ってきます!」
「気を付けてな」
門の所まで、村人総出でお見送りして、若者たちは片手をあげて挨拶をすると、猛スピードで走り出した。獣人の彼らは、馬車ではなく自力で走るらしい。
あっという間に彼らの姿が見えなくなり、三々五々にそれぞれの家や、朝の仕事に戻っていく。
「うちもキャンプ場が冬季休業になる前に、買い出しに行っておかなきゃ」
私もログハウスに戻るべく、スーパーカブの元へと向かうのであった。





