第281話 獣人の若者たちと冒険者ギルド
結論から言って、ヘンリックさんたちはエイデンの山の麓、ネドリたちの村のすぐ脇のあたりで家? を建てることになった。
……家なんだよな。
ビャクヤたちの巣みたいに、こう、地面をくりぬいてくって感じなんだけど。某ファンタジー映画の小人たちの家みたいな?
さすがに地面を掘っている間の生活は、ログハウスを仮の宿のようにしてたけど、ある程度掘り進めたら、穴の中に住みはじめてた。それが彼らにとって居心地がいいなら、いいかな。
一応、村の堀の外だったので、タブレットの『ヒロゲルクン』を使って、色々変更してたら、ヘンリックさんたちがあんぐり口をあけて見てた。
……まぁ、そうなるよね。
厚手の上着がないと寒く感じ始めた頃には、彼らの満足行く家が出来たらしい。煙突が山の斜面から出ていて、そこから煙が上がっている様子をよく見かけるようになった。
同じころ、獣人の若者たち(ケニーやラルル、ドゴルたち)が、旅に出るという知らせが、ログハウスの前で燻製肉を作ってた私のところに届いた。
「雪が降る前に、一度、獣王国に戻らないとならないんだって」
燻製をしている脇で、焚き火をしている私たち。ガズゥとテオ、マルが焚き火の前でしゃがんでいる。焚き火の中には、アルミホイルに包まれたサツマイモが、ゴロゴロと入っていて焼きあがるのを待っている状態なのだ。ちなみに、サツマイモはログハウスの敷地の畑で育ったヤツ。見事に大きく育ってる。
「なんで、戻る必要があるの?」
「なんか、冒険者ギルドに拠点の移動報告の義務があるんだって」
「ケニーにいちゃんたちは、ぼうけんしゃだからな」
「な!」
冒険者ギルドか。
獣人の村には出張所のようなものがなく、いつも近くの村まで行っていたらしい。
確か、前に買い出しに行ったあの街にも、冒険者ギルドはあったと思うけど、そこではダメなんだろうか、と聞いてみると、ガズゥたちは、しかめっ面になる。
「五月様、あそこは、俺たち獣人をよく思ってないのが多いから」
「いじめられるかも」
「いじめられる~」
そういえば、獣人の村に行く途中に襲ってきた冒険者がいたっけ。あいつらがいたら、獣人ってだけで、面倒なことになりそうなのは、私でもわかる。
「そうなると、あの街の次に近いのが、獣王国の街になるわけなのね」
「そうみたいです」
「ここからだと、どれくらいかかるのかしら」
「ケニー兄さんたちだったら、2,3日で街につけるんじゃないかな」
となると、往復で最低でも1週間はかかるのか。結構な時間だ。
「このへんは、ゆきはいっぱいふる?」
「むらは、ゆきでうもれちゃったよね」
確かに彼らの村は、ここよりも北にあった。テオとマルの話の感じから、結構雪深いところなのはわかる。でも、この前の冬は山の中に籠ってたから、この辺りの冬の様子は、判断しかねるんだよね。特に、エイデンの不機嫌でドカ雪が降ったから、これがいつも通りなのかもわからない。
「前の冬は雪が凄かったけど、今年はどうだろうねぇ」
とりあえず、エイデンのご機嫌だけは損ねないようにしないと、彼らが戻ってこれなくなるかもしれない。
「いつ頃、村を出るって?」
「明日、見張り台が出来上がるはずなんで、それが終わったらって言ってました」
「あれ、もう出来るんだ。早いねぇ」
村を囲う石壁の内側四隅に、見張り台を作り始めた村人たち。ドワーフたちも手伝ってくれたようで、けっこうがっしりしたモノを作っていたのは私も知っていた。
そこまでする? と思わないでもないけれど、万が一があってもいけない、ってことなんだろう。彼らと私の中での危機感の差だと思う(私が甘いってことだ)。
「そっか。じゃあ、人数分のミサンガでも作ろうかな」
「みさんがって、これ?」
「これ?」
テオとマルが腕に付けているミサンガを嬉しそうに見せてくれる。結構ボロボロになってるね。切れるのも時間の問題かも。
ガズゥに後で人数を教えてくれるように頼むと、私はサツマイモを取り出そうと、 火バサミを焚き火の中へと突っ込んだ。





