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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
二度目の秋も、冬支度で大忙し

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第279話 穏やかな朝とドワーフ

 打ち上げの翌日。ネドリの屋敷のエントランスには、酒にのまれた死屍累々が転がっている。つい最近も、同じような光景を見たなぁ、と思いながら、私は屋敷のキッチンに向かう。中ではママ軍団がキビキビ動いている。


「おはようございます」

「あ、五月様、おはようございます。まだ、休んでいらしてもよかったのに」


 私も勢いで夜遅くまでいたものだから、ハノエさんから泊っていけと勧められて、素直にお世話になった次第。さすがに、暗闇の中、スーパーカブを酔っ払い運転して帰る勇気はなかった。こっちでは酔っ払い運転で捕まることはないかもしれないけどね。

 二日酔いになるほどは飲んでません。


「いえいえ、目が覚めちゃったものですから」


 ママ軍団も他の獣人たちと同じくらい飲んでいた気がするんだけれど、元気だなぁ。


「何か手伝えることは」

「いえいえ、五月様にお手伝いいただくなんて」

「そうですよぉ、もう少し、ゆっくりされたらどうです?」


 結局、キッチンからは追い出されてしまい、手持無沙汰になった私は、そのまま屋敷から出て、立ち枯れの拠点の畑の方にやってきた。


「あ、五月様! おはようございます!」

「おはようございます~」

「おはよう~」


 なんと、ガズゥたちがハーブ類に水やりしてくれていましたよ。


「おはよう。ありがとうねぇ」

「いえいえ! ……って、五月様、お酒臭いですよ」

「あう、ごめん」


 思わず、ササッと彼らから離れる。そういえば、獣人たちは嗅覚が敏感だった。大人たちは皆酒臭いから、そこまで感じなかったのかもだけど、ガズゥたちはダメでしたか。

 水やりは彼らに任せて、私は畑の様子を見に行く。ほんと、ここは成長速度がおかしい。そのせいもあってか、季節とか関係なく育っちゃうから、助かるといえば助かるんだけど。

 せっかくなので、トマトをいくつかもいで、屋敷に戻ることにする。ガズゥたちも、自分たちが好きな野菜を手に取ってる。好き嫌いが現れるので、ちょっと笑ってしまう。特に、ピーマンと人参は不人気だ。


「おや、五月様、おはようございます」


 戻る途中、ユグドラシルの足元の池のところで、ヘンリックさんと会った。彼はあの屍の中にはいなかったのか、随分とスッキリした顔だ。


「おはようございます」

「いやぁ、こちらの池は、冷たくて気持ちいいですなぁ(水の精霊もたくさんおるわ)」

「底の方まで見えて、水も澄んでますしね」

「そうそう、立派なマイゴが泳いでるのまで見えるとは、思いもしませんでしたよ」

「マイゴ?」

「ほれ、あそこに」


 ヘンリックさんの指さす方を見れば、大きく育ったハスの葉の下に、細身の魚が数匹、群れをなして集まっている。魚のことはよくわからないけど、見た感じ、ニジマスとか鮎とか、そんな感じだろうか。

 というか、マイゴって魚の名前だったのね。迷子? とか思ってしまったのは、口にするまい。


「あれは、ドゴル兄ちゃんたちが獲ってきて、ここに放したんです」


 腕に野菜をいくつか抱えたガズゥが隣に来て言う。


「南の方に、川があって、そこで獲ってきたって」

「おお、昨夜の食事にも出てきてたアレか」

「そうそう!」


 いつの間に放流したんだか。まぁ、私も魚を入れたいなぁとは思ってたから、ありがたい。あっちで買ったハスも、さすがに、池を覆いつくす程にはならないけれど、あっという間に大きくなってしまった。これ、レンコン採れたりするんだろうか。でも、けっこう深いから、舟とか浮かべないと無理そう。

 朝から賑やかな子供たちの後をついていくと、ヘンリックさんが立ち止まった。


「あの、五月様」

「はい?」

「お願いが、ありますだ」

「なんでしょう」

「……わしらを、村の端で構わんので、住まわせてもらえないだろうか」


 うん。見習いさんたちが、ぶちぶち言ってたヤツだ。予想はしてた。


「理由を伺っても、いいですか」


 ヘンリックさんは、太い眉を八の字に下げながら、ポツリポツリと話し出した。


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