第278話 打ち上げと、洗濯機
水浴び場が完成した。
まだ水を張っていないので、ただのタイル張りのプールでしかない。さすがにこの時期じゃ、寒いからね。夏のお楽しみだ。
無事に完成したので、村のそばにある大きな東屋で、打ち上げだ。
「いやぁ、旨いですな、このエールは!」
ヘンリックさんの口元が泡だらけになっている。
実際はエールではなく、あちらで買ってきたビールだけどね。ドワーフのイメージが酒飲みだったので、大量に買っておいたのだ。2リットルのミニ樽。自分一人だったら、確実に買わない。他にも安いワインとか、ウィスキーなんかも用意したけれど、大丈夫だろうか。大丈夫、とは味ではなく量が。
「カーッ! なんですか、これは! 旨すぎるっ!」
奥の方では、見習いくんたちが、獣人たちと盛り上がっている。
うん、そんなに長い期間でもないのに、めちゃくちゃ馴染んでるな。
さりげなくエイデンも入ってる。ドワーフたちは、彼の正体に気付いてないのか、バンバン背中を叩いてる。エイデンも楽しそうだから大丈夫なんだと思う。
「五月様!」
「あ、ハノエさん」
手には焼肉モリモリに乗ったお皿を手に現れたのは、ママ軍団だ。ちなみに、お肉の提供はエイデンだ。
「本当に、アレ、いただいてもいいんですか?」
「あんなに立派な、洗濯の魔道具なんて」
「それも3台も!」
そうなのだ。
稲荷さんの奥さん、レイティアさんてば、洗濯機3台もヘンリックさんに持たせてた。洗濯機の話を稲荷さんにしたのはつい先日。歩いてきたヘンリックさんたちは、いつ、どうやってレイティアさんから受け取ったのか、すんごく不思議。
とりあえず届いた洗濯機は、タイプでいうと、あちらでいう二層式。ヘンリックさん曰く、2世代くらい前のタイプなんだとか。それでも、手洗いよりはよっぽどいい。
それにしても3台も洗濯機持ってる稲荷さんの家って、どんな家なんだろうかと気になるところ。いや、それよりも、稲荷さん、3台新しいの買わされるのかなぁ、とちょっとだけ思った(遠い目)。
一応、この二層式の洗濯機、水と光の魔石がないと稼働しないのだそうだ。水はそのまま水、光が汚れを落とすらしい。
支払いの方は、稲荷さんが自動引き落とし(当然、『タブレット』の中にあるお金)をするとのことで、現金払いをしないで済んだ。かなりの大金になるんじゃないか、残高大丈夫なんだろうか、と思ったんだけど、引き落とし後の残高は、辛うじてヘンリックさんたちに支払う金額くらいは残ったので、ホッとした。
「いえいえ、少しでも皆さんの手間が減るんでしたら」
どうせ、貯まる一方の、使い道に困るお金ではあったし。
「助かります!」
「それも、専用の洗濯場まで、ご用意いただいて」
「いえいえ」
洗濯場と言っても、いつもの小屋を作っただけなんだけど。まぁ、排水用の口だけは、獣人たちにお願いしましたが。
「ええ。洗濯の時間が減ったおかげで、畑仕事や、狩りで遠出できる余裕ができました」
「そうそう」
ママ軍団、女性といえど、さすがです。
狩りと言っても、荒地の方は小さなネズミくらいしかいないのだそうだ。
ビャクヤやホワイトウルフたちは、けっこう大きな獲物を獲ってくるし、エイデンに至っては、どこにそんなのいたの、と思うような巨大なのを獲ってくる。本当に、どこまで行ってるんだろう。
ちなみに、ママ軍団は、北の方の山の方へ行っているそうだ。
「獣王国の国境近くですか?」
「そうですね」
「でも、あの辺は魔の森の近くだそうで、魔物も強いんじゃ?」
「あら、やだ。五月様。あの辺の魔物でしたら、私たち3人でも十分狩れるんですよ?」
ホホホ、なんて軽やかに笑ってる彼女たちに、私も引きつりながら笑うしかなかった。





