表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
二度目の秋も、冬支度で大忙し

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

301/978

第276話 職人さんがやってきた

 獣人の畑では、小さな芽が出始めた。

 獣人の村の倉庫にあった物の他に、この前来た行商で種もいくつか買ったのだ。名前を聞いたことのない野菜ばかりだったけれど、収穫時期を楽しみにするしかない。一応、麦は麦だった。

 といっても、そんなに量は多くはない。皆で掘り起こした土地の半分は、そのまま残っている。


「せっかくだかられんげ草でも植えてみる?」

「れんげそう、ですか?」


 確か、肥料になると聞いたことがある。それに花の時期になれば、ハチたちの蜜を集めるのに使えそうだし。このまま放置して、また土が固くなるままにするのはもったいない。

 隣に立っているネドリに聞いた感じでは、「れんげ草」というのは聞いたことはないらしい。これは、ホームセンターで買い出しだろうか。


「五月様!」


 村の入口の方から、ドンドンが走ってきた。

 ドンドンは村の守備隊の隊長さんだ。守備隊、なんて、こんな小さな村で大袈裟な気もするんだけれど、あの冒険者みたいな物騒なのが来ないとも限らない。獣人ってだけで、十分に強そうだけど。


「どうしました?」

「あの、お客様なんですが」

「え、私に?」


 この世界で、私に来るお客さんなんて。


「あ、もしかして、行商の人かしら」

「いや、どうも、行商というよりは、ドワーフたちなんで、職人だと思うんですが」

「ドワーフ!」


 獣人でも思ったけど、『ドワーフ』も、なんてファンタジーなパワーワード!

 そうだ! きっと、ホワイトウルフたちの水浴び場作りに来てくれたに違いない!

 穴を掘るだけだったら、私でも出来るけど、壁面の処理は無理。せっかく作るんだったら、ちゃんとしたモノにしたかった。

 すっかり涼しくなったから、出来てもすぐには使えないけど、夏までに出来上がってれば御の字だ。

 私は小走りになりながら、村の入口へと走った。お堀の橋は、特別な結界のようなモノはないはずなので、問題なく渡って中に入ることはできているはず。

 案の定、石壁から先には入れなかったようで、立往生しているようだ。


「すみません、お待たせしました」

「……お、おお」


 肩で息をしながら、大きな声を出したものだから、ドワーフさんに引かれてしまった。


 うお~。本当にドワーフだ。髭もじゃで顔の半分は隠れてて、身長は私と大差ない。むしろ、若干小さいくらいな人々だ。樽みたいな身体に、古びたリュックを背負っている。皆、歩いてきたのか、埃塗れに見える。獣人ではないのに、こんな荒野を徒歩で? と思うと、感嘆してしまう。

 ひー、ふー、みー……全員で8人か。

 7人だったら白〇姫みたいなのに、と思ったのは内緒だ。


「お前さんが、五月様だろうか」

「はい、あの、エルフの行商人さんからお願いされたんでしょうか」

「そうだ。レディウムス殿からの依頼で参った。あと、レィティア様から渡すように言われているものがあるんだが、どこに置けばいいだろうか」

「あ、では、どうぞ中に」

「……入れるのか?」


 オドオドしながら聞いてくる。どうも一度入ろうとして弾かれてしまったらしい。


「大丈夫ですよ」


 私が入るのを認めたのだから入れます。

 恐る恐る中に入ったドワーフたちは、中に入って驚いた。


「……こんな立派な家を作る職人がいるならぁ、俺たち、必要ないんじゃないか?」


 呆然と口にするドワーフ。

 いやいや、そうでもないんですって。

 私は苦笑いを浮かべながら、彼らを村の中央の方へと案内するのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ