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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
二度目の秋も、冬支度で大忙し

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第273話 稲荷さんと獣人の村

 洗濯機を買う方向でお願いをすると、ちびっ子たちに果樹園を任せ、稲荷さんといっしょに立ち枯れの拠点へと向かう。ゆっくりと歩きながらである。


「ずいぶんと、間伐が進んだようですね」

「そうですね。だいぶ、この辺は日が入ってくるようになってますし、来年の春のさくらんぼは楽しみです」


 ガズゥたちの手伝いのおかげもあって、だいぶスッキリしたと思う。

 今年のも、それなりに実ってたけれど、まだ背の高い木々に遮られてた感じはあったし、ハチたちもいるから、来年の方がもっと大きくて量もできるんじゃないかと期待している。

 歩いている私たちの後を、精霊たちが集まってきて、だんだん賑やかになってきている。見えるのは、私と稲荷さんくらいかもしれないからいいけれど、だんだんと騒々しくなってくるのは困ったものだ。

 

「おおお……随分と大きいですね」


 ユグドラシルが見えてきて、最初の言葉。

 確かに周囲の木々に比べて大きいけど、私の中の『世界樹』っていうイメージでは、もっと大きいんだよな。


「それに、なかなか立派な村が出来ているようで……ふむ(ただ、ちょっと弱い部分がありますね)」

「そうですか。取り急ぎで作ったので、彼らが生活することを考えると、もうちょっと広げた方がいいのかなぁ、とも思うんですが」


 稲荷さんは石壁に触れながら、上を見上げてる。


「まぁ、普通に村として生活していく分には十分でしょう。この梅の木、結界の機能がついてますね」


 獣人の村にあった梅の木は、こちらの村でも四隅に植えた。ここならガズゥたち守るべき者がいるから、結界の機能がそのまま生かされるだろうから。

 門から村の外へと出てみる。目の前は相変わらず荒地が広がっている。右手は、まだ浄化しきれていない黒い土が見える。獣人たちもわかっているのか、右手は手付かずで、左手の方で農具を手に土地を耕している。


「ふむ、石壁の外に畑ですか。ここは獣人たちが?」

「そうです」

「できれば、望月様も手を入れて頂いた方がいいです」

「あー、ここは『私の土地』の範疇ではないからですね」

「そうです。最寄りの領主が難癖をつけてくる可能性は、ないとは言えませんから」


 今まで一度も、そんな話はきたことはないけど、石壁でここまで主張しているからには、そのうち、何か言ってくるかもしれない。

 いい領主だったらいいけど、業突張りとかだったら厄介そうだ。


「畑を囲うように、あぜ道的なものを作ればいいですかね」

「そうですねぇ。灌木で囲うのもいいかもしれませんね。そういえば、こちらには魔物除けの灌木があったはず。そういうのを植えてみてはいかがです?」


 なんと、そんなものがあったのか!

 ガズゥたちは、エイデンたちのおかげか、今では多少の魔物は自力でやっつけちゃうけれど、これから先、小さな子供が増えた時のことも考えて、用意しておくのも悪くはない。


「それに、堀などを掘って周囲を囲うのもいいんではないですか」

「ほ、堀ですか?」

「ええ。あのユグドラシルの元にある池の水を使って、石塀の外、もしくは、灌木の周囲とかにめぐらすとか」


 そこまですると、まるで砦みたいじゃない? やる必要ある?

 ぽかーんとしているところに、畑作業をしていたのか、鍬を担いだネドリがやってきた。


「五月様」

「あ、お疲れ様です」

「息子たちに、いいものを頂いた……よ……うで……えぇ!?」


 近寄りながらにこやかに挨拶をしていたネドリが、立ち止まって小さく驚きの声をあげる。


「え、どうかしました?」

「ふむ……なるほど。あの者は私が何者かがわかるようですよ?」


 稲荷さんを見ると、ニヤリと悪そうな顔。

 まさか。

 そして、ネドリの方を見たら、いきなり片膝ついてました。


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