第270話 ネックウォーマー
ちびっ子3人用のネックウォーマーが完成した。ついでに私のも。
ガズゥが緑、テオが青、マルがオレンジ。私のは柄にもなくピンクだ。ピンクといっても赤が強めなので、そこまで可愛い感じではない……はずだ。
ようやく雨があがり、前より空気がひんやりしている気がする。
朝から立ち枯れの畑の方へ向かうと、スーパーカブの音に気付いた子供たちが走ってくる。うん、朝から元気だ。
さっそく、3人にネックウォーマーを渡した。
「え、貰ってもいいんですか?」
「ふおー」
「ん、ん? お、あったかい?」
ガズゥは少し遠慮気味だったけれど、テオとマルは私の真似をして首につけて、ご機嫌だ。しかし、見るからに薄着(前にあげた、ひざ丈のズボンにTシャツ、足元はボロボロの革靴?)の彼らに、ネックウォーマーの方が違和感ありまくりだ。
そういえば、獣人たちの衣服は、地味な色味(オフホワイトとか茶系、あとは黒)がほとんどだ。革製品が多い感じではあるものの、服などの生地は、あまり上等ではないのはわかる。それでも、動き回る彼らには十分に丈夫な生地なのだろう。
そもそも柄のあるような生地はみかけない。聞いてみると、私が普段作業着のように着ているような、カラフルな色合いのタータンチェックのシャツ自体、見たことがなかったらしい。
布自体、行商人が持ってくるのを買うか、最寄りの町(馬車で3日)まで買い出しに行くか、くらいだったそうだ。そういえば、この前来たエルフたちの商品も、あまり色鮮やかな服などはなかった。
ちびっ子たちに手伝ってもらいながら、ハーブへの水撒きと、野菜の収穫と新たな苗を植えたところで、獣人たちの村の方へと向かう。畑の成長ペースが落ち着いたとはいえ、1週間に1度の収穫ペースは、ほとんど森などでの採取生活だった獣人たちの食事事情にはかなり助かっているはずだ。
「五月様!」
「おはようございます」
「まぁ、こんなにたくさん、すみません」
村の中に入っていくと、すでに動き出していたママさんたちに遭遇する。どうも洗濯のために池に水汲みに来たようだ。
「おはようございます」
一番貫禄があって、緩やかな黒髪カールのゴージャス系美女がガズゥのママ、ハノエさん。そして、テオとマルのお母さんたちは、栗色の髪のほわんとした感じ。双子のようにそっくり、年子の姉妹なのだそうだ。 何がショックって、3人ともが、私よりも若い! いや、そりゃ、結婚している同期もいるし、確かに子供のいる子もいたけど……はぁ。
「まぁ、ガズゥ、首にしているのは何?」
ハノエさんが、ガズゥの首のネックウォーマーに手を伸ばす。
「五月様から貰ったのです!」
「ママ! ぼくたちも!」
「おそろい~」
テオとマルも、自慢気に見せている。
ママさんたちは、肌ざわりが気になるのか、何度も触れてはため息をついている。
「五月様、こんな立派なものをいただいて、よろしいのですか?」
申し訳なさそうにハノエさんが聞いてくる。
いや、そんな大層なものではないし。むしろ、ガズゥのが一番最初に作ったヤツなので、目も荒い。
「いえいえ、貰っていただけると嬉しいです」
そう答えると、よかったわねぇ、と嬉しそうに笑い合っている。その姿を見て、彼らが無事に一緒にいられることに、改めてホッとするのであった。





