第256話 救出準備
荒地を軽トラが走る。その両サイドをホワイトウルフたちが走っている。
ハンドルを握るのは当然私。助手席にいるのはケニーだ。
「急げ~、急げ~」
ゴットンゴットンと音をあげながら走る軽トラ。舗装してよ! と怒鳴りたくなる。無理だけど。
隣に座るケニーは顔色が悪い。確実に車酔い。なんとか我慢しているところだろう。
馬車組が無事に到着した翌日。落ち着いた彼らから、村の様子を聞いて、すぐさま軽トラで向かうつもりになったのだが、魔物を運んできたエイデンに、もう村は大丈夫だと教えられる。
「奴らも何人かはもう村から出ているしな」
「え、そうなの?」
詳しい話はしてくれなかったけれど、村の周辺の魔物はもういないらしい。動ける者たちは、村に戻ってきたドンドンを先頭に、徒歩で移動し始めていて、追いついたホワイトウルフたちも何頭かが、警備しながら同行しているそうだ。
しかし、ケガ人や年寄りの中には、動きがとれない者も多く、まだ残っている人がいると聞いたら、こっちが心配になるわけで。
「え、じゃあ、食べ物とかは」
「まぁ、とりあえず、魔物の肉はあるんだから、なんとかなっているだろう」
「いやいやいや、ケガ人とか年寄りにはダメじゃん」
昨日到着した人達の世話は、若者たちに任せ、私は迎えに行く準備をするために、一度、あちらに買い出しに行ってきた。
まずは軽トラの荷台に乗せることも考えて、折り畳みのマットレスや毛布、クッションなどをまとめ買い。食料は肉類は嫌になるくらい『収納』してあるので、それ以外に米や牛乳などを買えるだけ買った。今回もかなり買ったので、レジのおばさんに驚かれてしまった。
戻る途中、いつもなら稲荷さんのところに顔を出すのだけれど、今日はスルーだ。次に来た時にでも、あのエルフのこととか、土地のことを相談しよう、と思った。
買い出しから戻る頃には、すっかり日が落ちていたが、念のため彼らの様子を見に行く。
皆、それぞれログハウスに入っているようで、家の中の灯りにホッとしたところで気が付いた。
「あれ、馬車は」
門のそばにまとめて止めてあった馬車がなくなっている。
慌てて、長屋の方に行ってみると、ケニーたちが仲良く食事をしているところだった。
「食事中にごめんね、あの馬車は?」
ちょうど口を米でいっぱいにしてしまっていたケニーに代わって、ラルルが答える
「あ。あの、ドゴル……先に来てた子たちが迎えに行くって」
「え、え、あの若い子たち?」
「はい」
「なんで、止めなかったの!?」
「いや、ドゴルたちなら、大丈夫かなって」
あんな若い子たちが? でも、ここまで来れたんだし、そうでもない? ホワイトウルフたちは一緒に行かなかったらしい。なんてこった! やっぱり危ないでしょ!?
「どれくらい前に出たの?」
「えーと、お昼前くらい」
「馬車だし、今から追えば追いつくか……」
「え!? 五月様がどうやって……もしかして、あのブルブルいう乗り物ですか!?」
「バイクでなんて行かないわよ」
「もしかして、あの『けいとら』で行くの?」
ガズゥがワクワクした顔で聞いてきた。
「それしかないからね」
私が長屋から出ようとすると。
「お、お待ちください! 行かれるのでしたら、私も行きます!」
「ケニー、あなたはガズゥの護衛なんじゃないの?」
「え、俺も行きたい」
「いやいや、ガズゥは待ってなさいって。せっかくテオたちも来たんだし」
「途中、魔物や盗賊に襲われるかも」
「うーん、ホワイトウルフたちがいるし、エイデンにお願いしてもいいし、大丈夫じゃない?(いなかったら置いてくけど)」
「いや、でも、万が一もあります!」
ちょっとだけ押し問答になってしまい、結局、ケニーだけが同行することになってしまう。そして、外は真っ暗。仕方がないので、私たちは翌朝出ることにした。





