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奴隷商人の馬車を警護している冒険者たちの内、不機嫌な様子の者が数人。
それもそのはず、これから向かう先は、元Sランク冒険者だったネドリの住む村だというのを知ったからだ。その村に奴隷商人の空の馬車が向かう。それだけで十分にヤバそうな話になるのは予想がつく。
村のことに気が付いたのは、道を半ばまで過ぎたころ。
「あんたら、ネドリの村に行くんかい」
休憩に立ち寄った小さな村の猫獣人の老婆が声をかけてきた。
「ネドリの村?」
「ああ。この道の先にあるのは狼獣人が多く住む村だけだで」
護衛として雇われた冒険者の多くは帝都からの参加者だったが、中には途中、王都に立ち寄った際に追加された者もいた。王都までの契約だった冒険者のパーティが抜けたためだ。 その冒険者たちは獣人ではなかったものの、長く獣王国に住む人族。ネドリの名を知らないはずもない。
「おいおいおい、そいつは聞いてないぞ」
「あ? なんだ、お前ら。ビビってんのか」
帝国から来ている冒険者たちが嘲笑うように言うが、王都の冒険者たちは知っている。
――触らぬ神に祟りなし。
「今更、依頼を断るとは、契約違反ではないですか。困りますよ」
奴隷商人が渋い顔になる。
「違約金を払ってでも、俺たちは辞めさせてもらう。命が惜しいからな」
「たかだか、元Sランクが一人だろうが」
呆れたように言う帝国出身の冒険者に、王国出身の冒険者は憐れんだような目を向けた。
「……自分の目で見てみないと、わからんだろうさ」
「まるで見たことがあるような話しぶりではないか」
「一度だけ、見たことがあるさ。あの人のパーティでの戦いっぷりをな」
王国の冒険者たちは、『奴隷商人の護衛』依頼だと思っていたが、ここまで来てみて、彼らの目的が獣人を、特に狼獣人を奴隷として捕らえに行くのではないかと察していたのだ。長年、獣人たちと親しく暮らしてきた彼らには、嫌悪感の方が強かったのだ。
「違約金は、あんたたちが無事に生きて戻ってこれたら、請求してくれよ」
「なんだとっ」
「皆、戻るぞ」
王国出身の冒険者たち全員、次の休憩場所に着く前に、彼らから離れていった。
「何だって言うんだ」
忌々し気に言う奴隷商人。
「こっちは、王家からも証文を貰っているっていうのに」
「まぁまぁ。俺たちに任せとけ(おかげで、俺たちの取り分が増えるってもんだ)」
「頼みますよ……特に今回は、白狼族の子供が目玉なんですから」
しかし、冒険者たちの言葉は、守られることはなかった。
「な、なんで、こんな所にトロールが!?」
「ヤバい、ヤバい、ヤバい」
「げっ、奴らに追われた他の魔物たちが森から溢れて来るぞっ!」
狼獣人たちの機転で、魔物の流れがネドリの村から、奴隷商人たちへと流れを変えることに成功していた。しかし残念ながら、それも半数でしかなかった。
残り半数は流れを変えることなく、ネドリたちの村の方向へと向かって行く。





