第244話 獣人たちの村の敷地を考える
私の家よりも少し大きなログハウスが、大きな東屋の並びに、3軒ほど並んで建っている。なかなか満足行くものが出来たと思う。
しかし、ケニーが用意できた木材は3軒分。十分、凄いんだけど、あと26軒建てないといけない。全然足りない。
「木材が足りんのか。よし、ちょっとトッてくるか」
「あ、お願いします~」
なんかエイデンの言葉に変なニュアンスを感じたものの、調達してきてくれるのはありがたい。エイデンが私の声に嬉しそうに手をあげ、飛び立つと同時に真っ黒で大柄なドラゴンの姿に変わった。何度見ても不思議である。
エイデンがどこからか持ってきたレンガは、ありがたく『収納』させていただいた。
単純にどっかから盗んできたとは思えないので、とりあえず、そこは信用しておくことにした。
私とガズゥ、精霊たちで作ったレンガは、どこからか貰ってきた石窯で焼くことに成功した。正確に言うと、火の精霊たちが、上手い具合に焼いてくれたのだ。獣人たちが来たら、この石窯を使いこなせる人がいるといいんだけど。
ちなみに、私があちらで買ってきた長石の代替品となる石、これも土の精霊が探し出してくれた。残念ながらうちの山周辺にはないらしく、よその土の精霊から聞き出してきたのを、エイデンが掘りだしてきてくれたのだ。それが、石窯の傍に山積みになっている。手持ちのレンガがなくなったら、使うつもりだ。
私はスコップ片手に、目の前の荒地に目を向ける。獣人たちが住む土地の範囲をどうしたものか、と悩んでいるのだ。スコップは目安の線を引くため。
一応、最初の3軒はうちの山裾に沿うように建てたけれど、このまま家を並べて建てると端と端の家って、けっこう遠くなる。日本の田園風景では、普通にあるけど、こっちって物騒なことが多いわけで。
「万が一、盗賊とか魔物に襲われたら、助けに行くのも大変そうだもんなぁ」
となると、やっぱり密集していた方が安心なのか。
「そういえば、初めて行った街って石壁で囲われてたっけ……あれが常識なのかなぁ」
今は完全に剥き出し。結界がはってあるのは山の周辺だけ。
私は背中に背負ったバッグからタブレットを取り出す。最近は作業中に邪魔になるので、お手製リュックを活用中。手縫いでかなり頑張ったヤツだ(おかげで、ミシンを買うべきだ、という決心に繋がったけど)。
「石壁、石壁……お、あった……馬鹿みたいに使うのね」
思わずびっくり。幅1m×高さ3mの石壁に石が60個。100m作るだけで600個だ。
「今『収納』している石って……あー、もしかしてサイズが足りないのが多いから、全然足りないのか」
木材もだけど、普通に石も足りない。
「とりあえず、居住範囲だけ決めて、おいおい石壁を作ればいいか。最悪、『ヒロゲルクン』で移動させてもいいわけだしね」
とりあえず、スコップの端を使って、ログハウスの建築予定の枠を書いていく。
東屋側を4軒、池を挟んでユグドラシル側に4軒建てるとして、そのまま4列並べて8軒×4列で32軒分。実際には他にも必要な建物もあるのかもしれないけど、あくまでも目安だ。
その周りに石壁を作る予定にして、ぐるりと線を引いていく。まだ何もない荒野。
スッと背を伸ばして、周囲を見渡す。
本当に、ここに家が建っていくのか、と思うと不思議な感じがした。





