第241話 買い出しと、稲荷さんと相談
今日の買い出しを終えて、山へと戻る帰り道。日が傾いているせいか
相変わらず、こちらの蒸し暑さは変わらない。異世界の方が空気が乾燥しているせいか、暑くてもまだ過ごしやすい。
軽トラの荷台には、今日の戦利品が山積みになっている。
ネットでレンガの作り方を調べて、必要そうな材料を買ってきたのだ。どうも粘土以外にも、砂とか長石とかいうのがいるらしい。
砂に関しては、掘った土を『分解』したことで少しばかり得られている。山の斜面を掘っていけば、これからも得られるだろうと思っているし、少し離れてはいるものの、川までいけばあるんじゃないかと期待している。
そして長石は粉砕しなきゃいけないらしいのだけれど、これは精霊たちにお願いしてみようと思っている。困ったときの精霊頼みである。
他にも、ホームセンターではキャンプ用のLEDライトやソーラー式のガーデンライト、寸胴鍋やブランケットなど、ショッピングモールでは食料品を大量買いした。
傍から見たら、災害用の買い出しか? と思われそうだ。実際、レジのおばちゃんが聞きたそうな顔をしてたけれど、にこりと笑ってスルーした。
なかなかの散財だけれど、後悔はない。
軽トラを運転しながら、稲荷さんと話したことを思い出す。
「なんと、狼獣人たちの移住ですか」
「はぁ、なりゆきで、そんな話になってしまいまして」
「ああ、もしかして、ガズゥくん絡みですかね?」
「そんなところです」
稲荷さんは、難しい顔をしながら、コーヒーを飲んでいる。インスタントではなく、ちゃんとドリップしたヤツだ。やっぱり匂いが違う。今度、コーヒードリッパーでも買ってこようかな。
「山の周辺の土地は、確かに空白地帯にはなっています……しかし、どこにでも文句を言ってくる輩はおりますからねぇ」
「隣の山はエイデンが城を構えてますし、何かあったら、彼に頼ろうかとは思うんですが」
私のところに来られても、あっちの世界での契約書しかないし。それが、こっちで通用するとは思えない。
「ふむ……そうですねぇ」
何か解決策があるのかと、期待の眼差しで稲荷さんを見つめる。
「望月様、あの山だけじゃなく、周辺の土地もお買いになります?」
「……はい?」
「どうせなら、望月様の土地にしちゃえば、誰にも文句言われないでしょ?」
「いやいやいや、例え買えたとしても、こっちの契約書じゃ通用しないんじゃ」
「ああ、大丈夫です。買うならあちらのお金で買っていただきますし、なんなら契約書もあちらの様式でご用意しますんで」
「……私、誰から買うんです?」
「そりゃぁ、イグノス様に決まってるじゃないですか」
……それ、本当に大丈夫なんだろうか。
「万が一、どっかの偉い人とかが出てきて契約書を見せろ、とか言って来たら」
「その時は、神官に確認させてください」
「神官……」
「はい。基本、土地の契約には神官の承認が必要なんですよ」
「初めて知りました」
「フフフ、神官が認めた契約書であれば、それが証拠になりますから(イグノス様の力のこもった契約書など持ったら、普通の神官なら気絶でもしそうですがね)」
にっこり笑ってコーヒーを飲み干す稲荷さん。
一応、近いうちに様子を見に来てくれるというので、それまでに購入については考えておくと伝えた。
失敗したのは、金額を聞くのを忘れたこと。あちらのお金で、いくらぐらいなんだろうか。なんか、怖い金額言われそうな気がするんだけど。





