第240話 粘土探し
木材は着々と増えている。主にエイデンの山の方の木だ。
途中、ケニー一人じゃ大変だろうからと、ラルルに私のチェーンソーを貸そうとしたら、断られた。やはり、あの騒音が嫌らしい。
長屋の裏手、池の前に山積みになっているのは、すでに枝打ちを終えたものだ。
枝打ちをしたのは、ガズゥとハク。なんと、ハクがガズゥに風の魔法を教えているらしい。獣人とホワイトウルフで意思疎通が成り立っているのか、と思うと、不思議だけど、どっちもフェンリルの血筋だからなのかなぁ、と勝手に想像している。
そして、長屋と同じ並びに薪用の小屋も3軒ほど建っている。
こっちには乾燥済みの薪が山ほど詰まっている。風の精霊、大活躍だ。
それでも、全世帯で一冬を越すのには、まだまだ足りないだろう。
それに、レンガだ。これがないとログハウスの暖炉が作れない。
当然、メニューには暖炉のない小屋というのもあるにはあるけれど、絶対、寒い。私なら、死ぬ自信がある。
一応、手持ちのレンガもあるにはあるけれど、10個に満たない。あちらで買ってきてもいいけど、29軒ともなると、さすがに金額が尋常ではないだろう。
先々を考えて、自分たちで作ることも考えないといけないと思うのだが、肝心の作り方など知らない。
たぶん、粘土などの土とそれを焼く炉のようなものが必要なのかなぁ? と漠然とイメージはある。でも間違っている可能性もあるので、一度、あちらに買い出しに行ったついでに、調べてこようと思う。
「とりあえず、こっちで調達できそうな粘土質の土がある場所を調べなきゃだけど……土の精霊さんたち、粘土のある場所、わかる?」
ここで精霊に頼らない手はない。
『わかるよ!』
『さつきのおやまにもあるよ」
『みずのせいれいのところのちかくだ』
「うん? 水の精霊って、うちの人工池のことかな」
『ちがう、ちがう、わきみずのところだよ』
「あー、あそこか」
敷地に水が湧くようになったから、すっかり忘れてた。
考えてみれば、地面の中に水が通らない層があるから、水が流れてるんだろう。
「うーん、この辺?」
『そうそう!』
鬱蒼とした木々の下、湧き水の流れているところに立ち尽くす私。周囲には土の精霊の他に、水の精霊もふよふよ浮いている。
表面だけ見たってわからない。とりあえず、『ヒロゲルクン』で『穴掘り』を実行。目の前にぽっかりと穴が空く。
「さて、『収納』で確認……うん、土としか出てないね」
重さは30キロくらい。前に貯蔵庫を作った時に比べれば、格段に掘れる量が増えている。あの頃は、スコップ1回分くらいしか掘れなかったもんなぁ……。
そこから『分解』を選択してみた。これで粘土質と石、砂、などに分けられないかな、と思ったのだ。
その考えは成功だったようで、土の他に、ちゃんと粘土質の部分や石、砂が分かれて出た。しかし、量としては全然足りない。
「うーん、無暗に穴を掘るのもなぁ」
湧き水周辺を眺めながら、どうしたものか、と悩む私なのであった。





