第238話 狼獣人たちの危機を知る
コーン……コーン……コーン
青空の元、斧で木を切っている甲高い音が響く。
伐採作業をしているのは、ケニーだろう。自分以外に、何かしら作業をしている音が聞こえるというのは、なんともいえず、嬉しいものだ。
一方の私は、立ち枯れの拠点周辺の整備をしている。
ユグドラシルが植えられたせいで、果樹の一部が大きく育った枝の下に入り込んでしまって、完全に日陰になってしまったのだ。仕方がないので、2つほど、東屋の方へと移植した。『ヒロゲルクン』ありがとう。
しかし、移植してしまうと果樹による結界できる範囲が変わってしまいそうなので、低めのガーデンフェンスを立てることでカバーしてみた。後でケニーかラルルにでも確認してもらうつもりだ。
私はユグドラシルの根本に立ちながら、周囲を見渡す。
「さすが世界樹」
池の周辺を『整地』して剥き出しの地面の状態だったところが、すでに小さな草が生えだしておりますよ。その上、瘴気で黒ずんでいた地面が『整地』した場所よりも少しだけ後退している。おそらく、ユグドラシルによって浄化されてるのだろうけれど、うちの果樹たちのペースよりも早い。
「エイデン様様って感じね」
ちなみに、ガズゥたちは長屋暮らしを始めた。
といっても結界の中ではなく、池のほとりへと移築したのだ。ついでに、トイレとお風呂も一緒だ。ネドリさんたちが泊まった夜、ガズゥが彼らに自慢気に使い方を説明してた様子は、今思い返しても笑ってしまう。
ネドリさんは、翌日には村へと一人でとんぼ返りした。
なんでも、村が帝国の人たちに襲われる可能性があるのだとか。
前に聞いた時は、その帝国っていうのとガズゥの住む村って、真逆の場所にあるって話で、何度も狙われるような場所じゃない気がしたんだけど、その誘拐に獣王国の人も絡んでいる可能性があるんだそうだ。
だから、簡単に入国して誘拐なんかするのか、と思ったら、腹が立った。
夕食をとりながら、その話をした時、ネドリさんから、村人をこちらに移住させてもらえないか、と聞かれてしまった。
正直、それを判断するのは私なのか? と、疑問に思った。
「この山は、私の持ち物ですけど、他は知らないんですよね」
「そうなのですか?」
チラリとエイデンへと目を向けるネドリさん。
エイデンは大きな肉にかぶりついていて、その視線に気付いていない。
「あー、そういえば、エイデンも勝手におうち作ってたよね」
「うむ?」
「そっちの山とかは?」
「ふんっ、別に山に限らんでもよかろう? それこそ、その辺の荒地には誰も住んではいないんだ」
確かに。
「まぁ、木材になるような木はいくらでもあるんだ。裸山にしない限り、勝手に使えばいいんじゃないか……ほれ、あそこには水もあるんだし」
「うーん、まぁ、もし持ち主……領主様みたいなのが来たら、個別に対応してくれればいいですよ」
「(そんな無謀なヤツなどいやしないと思うが)いいんじゃないか」
「ありがとうございますっ」
心底ホッとしたという感じのネドリさんに、そんなに切羽詰まってるんだろうか、と少し心配になった。





