第234話 お土産の話
立ち話もなんなんで、東屋の方へと案内する。
ネドリさんはかなり身軽な様子だけれど、後ろにいた若者2人は大荷物だ。東屋の外にどさりと置く音が、重さが伝わってくる。アレを担いで、あの猛スピードで走ってくるって、獣人の体力、恐るべし。
私は『収納』から麦茶のペットボトルとプラスチック製のコップを取り出す。常備しておいて正解だわ。
(あれって、マジックバックかな)
(すげーな)
若者2人が何やら話しているけれど、聞き取れなかったので、そのまま麦茶をいれてテーブルの上に並べていく。
ガズゥはさっさと私の隣に座るけど、大人組はまだ東屋の外で遠慮している。
「あ、どうぞ、座ってください。どうぞ」
ネドリさんが若者たちにも座るようにすすめて、ようやく皆テーブルについた。
「えーと、ガズゥのお父様、わざわざ、ここまでいらしたのは……」
「はい、五月様には、息子たちを助けていただいた上に、色々と面倒を見て頂いたそうで、ありがとうございました。そのお礼にあがらねばと……部下がお邪魔させていただいた時には、慌ただしく、何もお返しする余裕がございませんでしたので」
「いやいやいや、ガズゥたちのことは、大人であれば当然のことをしたまでで……第一、彼らが無事だったのは、私がというよりも、ホワイトウルフたちが見つけてくれたおかげですよ」
思い返してみても、ごはんつくって、風呂に入らせて……くらい?
……むしろ、草むしりさせたり、狩ってきた魔物の肉ををめぐんでもらってないか?
私、大した事してなさすぎて、恥ずかしすぎる。
「いえいえ、それだけではございません。様々な物を子供たちに授けていただいたおかげで、無事に戻ってくることができました」
単純に、村に戻るまでに不自由しないように、と思うものを渡しただけな気がするんだけど。まぁ、それで無事に戻れたんだったら、よかったし。
「あの夜に光るランプや、《《水のなくならない水筒》》。それにボルダの実の苗までいただいて……一番は『ウメ』でしたか、その苗のおかげで、村がより一層、安全になったのです」
途中、なんかおかしなことを言っていた気がしたが、それよりも、梅の苗木のことの方が気になる。
「ちゃんと根付きましたか?」
「凄いんだよ!」
ガズゥが身を乗り出して、私の顔を覗き込んでくる。
「五月様に言われた通りに、梅の苗木を村の四隅に植えたんだ。そしたら、次の日にはでっかくなっててさ」
なんでも、梅の苗木を植えて2、3日経った頃、村の裏手の石壁のすぐ近くで、怪しい人間が3人ほど倒れていたのだとか。よくよく調べてみれば、ドグマニス帝国の人間だったようで(私は相変わらず、覚えられない)、人攫いじゃないか、とのこと。
村人たちの出入りは問題ないとのことなので、結界は機能しているようだけど……そんな悪人退治するような機能ついてたの!?
それにしても、そんなに頻繁に狙われるとか、ガズゥたちの村って大丈夫なんだろうか。梅の木だけでは不安な気がしてくる。
「ボルタの苗木も、『ウメ』の木ほどではありませんが、しっかり根付いてくれたようでして。あのような貴重な苗木まで頂きまして、本当に感謝しております」
「いえいえ、無事に根付いてよかったです」
「それで、村から感謝の気持ちをこめまして、いくつか品物をお持ちしてまして……」
座っていた若者2人がスッと立ち上がると、東屋の外に出ていった。





