第232話 立ち枯れの周辺の再開発(3)
穴に水が溜まったのは、穴が空いてから3日目。
荒地が目の前に広がる中、ぽっかりと大きな池のある風景の異質な感じがしてしまう。
穴が出来た時点で、目についた黒ずんだ土の部分、瘴気で汚れてる部分は約深さ50cmほどあった。ここでKPを使うのはもったいないか、とも思ったけれど、黒ずんだ部分が見えている方が嫌だったし、万が一、水にも影響が出るかもしれない(ちなみに水路の部分がすでに浄化は終わっているのは『鑑定』で確認済み)。
試しに池の周辺、約1m程の幅を『整地』してみたら、なんとか地下の部分も浄化されたっぽい。
水面は地面の淵、ギリギリのところまで溜まり、池の中央には白っぽい岩の先端が飛び出ている。水が澄んでいるおかげで、中央に大きな岩、その周りに小さめな岩で囲まれているのがわかる。
予想に反し、ほどほどの大きさの岩を持ってきたエイデンとノワール。なかなかいい感じに積みあげてくれたので、合格と言っていいだろう。
「水草とかは、川の方でも見にいってみればいいかな」
土手をエイデンに作ってもらって以来、見にはいっていないものの、水場周辺の草などはいくらでもあるだろう。
「ついでに魚でも採ってきてもいいかも……って釣りのセンスはないから、罠みたいなのでも作ってみる?」
さすがに、自力で作る情報は持っていないので、あちらに行った時に調べるなり、買ってくるなりするしかないか。
強い日差しの中、ぐるりと水辺を歩く。やっぱり、木が欲しい。
「川べりにある木っていうと……柳?」
単純なイメージだけど。
でも、柳というと幽霊も連想してしまう。ここに幽霊がいるとかわからないけど。そもそも、私に霊感はない……はずだ。精霊は見えるけど。
「これも、あっちに行って調べてからにしようか」
「何を調べるのだ?」
「うわっ!?」
またいきなり現れるエイデン。背後からのぞきこむのは、やめてくれっ!
「びっくりしたぁ」
「すまん、すまん。で、何を調べるというのだ」
「あー、ここに木を植えたら、木陰になっていいかなーって、思ってね」
「なるほど。となると、かなり大きな木がよかろうな」
「え」
「よし、任せろ」
そう言って、また、どこかに飛んでいったエイデン。
「……今度は、何持ってくる気……ていうか、浄化してないところに植えても枯れちゃうんじゃないの?」
とりあえず、今ある範囲よりも幅を広げて、『整地』しておくのが無難かもしれない。KPの無駄遣い……な気もしないでもないが。
私は『整地』を終えると、一休みするために東屋の方へと歩いていく。気が付くと、ホワイトウルフたちが数匹、近寄ってきた。
「何、どうしたの?」
残念ながら、この子たちとは会話はできない。
それでも何かしらの意思表示をしているようで、立ち止まった私のそばにしゃがんだ子は、鼻先を荒野の方へと向けている。他の子たちも同様だ。
「……何か、来るのかしら」
ホワイトウルフたちが苛立っている感じではないので、魔物や盗賊みたいなのが来るわけでもないようだ。
「あ、もしかして、稲荷さんの奥さんが手配してくれた人かな?」
そう期待して荒野の方を見つめた。





