第230話 立ち枯れの周辺の再開発(1)
「それにしても、ここもようやく雑草が生えてきたねぇ」
瘴気のせいで禿げ上がっていた地面が、植えた果樹によって浄化されたのが雑草の生え方で目に見えてわかる。まだ、中央の湧き水の流れ周辺にまではいかないものの、徐々に生えていっているのがわかる。
子供たちがいたときには忙しさで目が向かなかったけれど、こうして落ち着いて目を向けてみれば、ここもまだまだ中途半端な状態だったのに気付かされる。
「排水用の溝、塀の中までしか作りこめてなかったもんなぁ」
ガズゥたちが狩りに行っている間、キャサリンとサリーの2人が泥遊びの延長のように、溝を掘ってくれていたのを思い出す。
今にして思えば、貴族のご令嬢に何させてるの、と言われそうである。
中でもキャサリンに至っては、土の魔法の練習も兼ねて、と、溝の側面を強化して崩れないようにしてくれていたのには驚いた。
なんと、土を掘っている時に水の流れで崩れていくのを見て、『アースウォール』を作るための加減をコントロールするために、土の強度を高める練習方法を教わっていたのを思い出したのだとか。
おかげで、塀の中の部分の水路だけは、しっかりと固められている。
ありがたや~。
「あ。もしかして、土の精霊さんにお願いしたら、これと同じことってできたりする?」
思わず、私の周りを飛び回っている精霊に声をかけてみると。
『なになに、このみぞのこと?』
「そう。こう、同じ幅でこんな風に固くすることってできるのかなって」
『できるできる』
『よゆうよゆう!』
そう答えたかと思ったら、ズズズズズズッという音とともに溝が真っすぐに伸びていく。
「おおお、す、凄いっ」
『さつき~、どこまでのばす~?』
「え、どれくらい伸ばせるの?」
『どこまででも~』
そう言っている間にも、溝は伸びていき、ついには果樹でできた結界の際のところまで行きついてしまう。
「あ、あ、いったん、ストップ!」
『すとっぷ?』
「と、止まって!」
『はーい!』
……うん、見事にまっすぐな排水溝……いや水路というべきか……ができたね。
ていうか、今まで自力でやってたのは、なんだったの、と果樹園やドッグランの排水の流れのことを思い出し、ちょっとだけ悔しくなる。
『ねぇねぇ、あれ、またみずがあふれてるけど、どうする?』
「あー」
水路を作る前も、溢れたように滲みながら、そのまま地面に浸み込んでいっていた。だったら、今回もそのままでもいいかな、とも思ったけれど、どうせだったら大きな池にでもしてもいいかもしれない。
「あそこに、大きな穴って作れる?」
『どれくらいのおおきさ?』
「そうねぇ。うーん、ドッグランくらい?」
けっこう広いけど、せっかくなら大きい池にしてもいいんじゃないかと。ちょっと気軽に言ってしまったら。
『できるできる~』
『かんたんかんたん~』
ドゴンッッ
もの凄い音とともに、土煙が舞った。
……うん、精霊たち、加減しないよねぇ。
苦笑いしながら、ゆっくりと穴の方に近づいていくと、隣の山のほうから黒い影が2つ飛んできた。
「ど、どうしたっ!」
『なにごとー!?』
焦ったような顔のエイデンと、ワタワタしたノワールが現れたのだった。





