第229話 養蜂箱設置!
「よし、完成~!」
目の前に並ぶ、養蜂箱。
意外に簡単に済んだのは、『タテルクン』の存在が大きかったといえる。
一度、買ってきたのを組み立ててみて仕組みを理解してから、まず自力で一つ作ってみた。
底のない升のような四角を重箱のように重ねる。これには十字に細い木の棒を通す。これ、大きくなった巣を落とさないようにするためらしい。これを4つほど重ね、上に少し細目の升にすのこ状に板を張る。暑くなった時の給気口になるらしい。その上に天板をつけると完成。ホームセンターで買った養蜂箱には、蜜蝋がついていたけれど、こっちのハチに効くかはわからないので、そのままだ。
一応、購入したものの、1.5倍の大きさに挑戦してみたが、それだけで2日かかった。
まず、材料となる板や棒がなかったので、木材から作るところから始めたせいで、時間がかかってしまったのだ。
でも一度作ったおかげで、作り方を理解したのか、『タテルクン』のメニューに『養蜂箱』が追加された。さすがだね。
これはもう、ドンドン作るしかないでしょ……で、最終的に出来たのが4個。買ってきたのと合わせると5個になる。並べて見ると、なかなかに壮観だ。
設置した場所は、
・果樹園
・桜並木
・トンネル側の道
・立ち枯れのハーブ園
・ジャスミンの柵
この5か所。
果樹園も桜並木も、もう花の時期は終わってしまっているけど来年のためにも、と設置済み。他のところも、少し時期外れだったり、花がまだ多くなかったりするけど、少しでもこちらにも巣を作ってくれたらいいな。時間はかかるだろうけど。
ハチミツも楽しみだけど、蜜蝋とかも期待したい。できたら蝋燭とか、ハンドクリームとか作ってみたい。まさにスローライフって感じだわ。
「一応、設置したけれど、精霊さんから場所を伝えてくれない?」
最後に設置したのは、立ち枯れのハーブのそばの養蜂箱。それに寄りかかりながら、風の精霊にお願いをする。ここはハチの巣のある斜面の裏手にあるからだ。
『だいじょうぶよ。もう、あのこたち、ばしょ、わかってるから』
「え?」
『さつきはきづいてなかったようだけど、はたらきばちたちが、さつきのあとをおいかけてたのよ?』
「そうなの?」
『ほら、とんできたわ』
風の精霊の言葉に、空を見上げると、1匹、2匹と飛んできている。いや、目視できる大きさってどうなのよ。
「そ、それにしても、大きいねぇ、君たちは」
大きく育ったローズマリーの花のまわりに、ミツバチたちが飛んできて、養蜂箱の入口にも入り込んだ。入口のサイズはばっちりな模様。
うん、やっぱり、クマンバチサイズだよなぁ。
『そりゃそうだよぉ』
返事をしたのは、風の精霊。
「うん?」
『だって、さつきのうえたはなたちのみつでそだったんだぜ?』
「……うん?」
『おおきくなるのも、とうぜんじゃん』
はい?
え、これは異世界サイズじゃないの?
『こいつらは、さくらのはなのみつでそだったんだろうねー』
『はたらきばちたちは、もう3せだいめくらいじゃない?』
『おおきくもなるよねー』
ミツバチたちが、嬉しそうに飛び回ってます。
……現実逃避しても、いいですか?





