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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
山でやること、まだまだあった

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236/1014

第221話 ドッグラン、ほぼ完成

 エイデンはチョロかった。

 いや、いい人(?)だった、というべきか。


 盛り土のままでは、川が氾濫した時に崩れやすいから、もう少し固めにしてほしい、と言えば、まるでコンクリートのように固めてくれた。川のそばに立って、土手の端が見えないくらい。ドッグラン自体は、そこまで長くはないけれど、万が一を考えると十分だと思う。


 その流れで、伐採の後の切り株も見事に山積みしてくれて、土地までならしてくれた上に。


「わんわんわんっ!(おれ、いっちばんっ!)」

「わわわんっ(ずるいぞっ)」

「わっ、わわんっ(待ってよ~)」


 ちびっ子用に、遊具、というのだろうか、ちょっとした小山にトンネル、滑り台、切り株を並べた平均台のような物を作ってくれた。おかげでKP使わずに済んだので、大助かりだ。

 あとは地面が土で剥き出しになってしまっているところに、芝生でも敷きたいところだけれど、今のちびっ子たちでは、穴掘りでボロボロにしそうなので、止めておこう。


 ドッグランの敷地は、ログハウスの周囲を囲っている板塀と同じもので囲ってみた。

 出入り口は2か所。1か所は、果樹園から下りてくる道。その脇を流れる人工池からの排水(もう小川のようなものだけど)は、そのまま水飲み場になっている。もう一か所はその側の脇に新たに建てた厩舎に、川の方へ抜けるドアを追加した。

 この出入り口は、基本解放されていてホワイトウルフたちも中で遊んだり、休んだりできるようになっている。板塀による結界があるので、許可された者しか入れない。

 ちなみに、ここはエイデンも入れるようになっている。彼がここを作るのを手伝ってくれたこともあるのかもしれない。


「お疲れ様」


 私は『収納』にしまっておいた、2ℓサイズの麦茶のペットボトルを取り出す。少しぬるいけれど、ステンレス製の大きめのマグカップに入れて渡す。

 真面目に、早いところ、時間経過のない『収納』にバージョンアップしたいわ。

 とりあえず、ペットボトルを小川の中に沈めておく。これで少しは冷えるかも。そんなに深さもないし、流れも強いわけでもないから、流されることもないだろう。


「あ。もしかして、これ、冷やすことってできる?」

「うん? できるぞ?」


 手にしていたマグカップを差し出すと、エイデンの指先から白い空気が流れ出す。


「お、おおお!?」


 徐々に表面に薄っすらと氷がはりだして……このままじゃ、中まで凍っちゃう!


「ちょ、ちょっとやりすぎっ!」

「ああ、すまんすまん。小さいものは難しいぞ」


 いや、できるだけ十分凄いんだけどさ。


 ドッグランを走り回っているちびっ子に、それを追いかけているハクとユキ。シロタエはのんびり厩舎で寝ている。

 その脇にでもウッドデッキでも敷いて、私なんかも寝転べるようにするのもいいかも。椅子とテーブル置いて、ちびっ子たちを眺めてるって、なんかのんびりしてていい感じじゃない? ガーデンパラソルみたいなのを立てるのもいいかも。


「やだ、どんどん楽しくなってくるんですけど」


 ちょっとニヤニヤしながら、ちびっ子たちを見守る私なのであった。


         *   *   *   *   *


 エイデンは楽しそうな五月の横顔を見つめ、自身もニヤニヤしてしまう。

 ついこの前までは、あんなに近寄るのも拒否されていたのに、今では彼女のそばに立つことも、自然に会話をすることもできる。

 子供たちがいなくなったことで、余計な人間もいない。


 ――五月の笑顔を失わないようにしなくては。


 エイデンはこっそり、ドッグラン周辺の結界をはる。これは五月に悪意をもって近寄ってくる者全てを拒絶するものだ。結界に触れた者は……砂塵と化すのだ。

 こっそりと風の精霊たちにエイデンは告げる。


『万が一、残骸が残っていたら、吹き飛ばしてしまえ』

『おっけー!』

「なに?」


 五月が急に振り向いた。


「なんでもない」


 エイデンがにっこり笑ってみせると、五月は首を傾げながらも、再びちびっ子たちの方へと目を向けるのだった。

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