第220話 伐採と土手
勢いよく風の刃が、林の中を飛んでいく。
ズドドドドーンッ
『まぁまぁかしら?』
「いやいやいや、シロタエさんや、やりすぎですって」
目の前で数本の木が倒れていく。そして、その木に駆け寄るのは、ちびっ子3匹。
「わん、わわわん(こいつ、こいつめっ)」
「ぐーっ、ぐーっ」
「わんっ(やーっ!)」
倒れた木の枝打ち……のつもりなんだろうなぁ。枝に喧嘩売ってるようにしか見えないけど。ボロボロにしてくれちゃってる。
『ハク、ユキ、そっちを頼むわ』
『はーいっ』
『任せて~』
すっかり大人になってる2匹もシロタエ同様に、風の魔法を使いこなしては、綺麗に枝打ちしてくれる。
ドッグランのために、林の部分を開墾しに来てみたら、ビャクヤから話を聞いたらしく、シロタエたちがやってきて、私の手伝いをしはじめたのだ。
いや、助かるけどさ。
やたらめったらに荒らされたら困るので、急いで、ドッグランにする範囲を決めた。
一応、形は長方形で長辺をかなり長めにとった。だいたい、果樹園の倍くらいだろうか。目印になるようにと、大きめの板塀を四隅と、ちょうど真ん中あたりに設置。その範囲にある木を軒並み切り倒してもらっている。
それがさきほどの騒ぎなわけだ。
木を倒すのはシロタエに任せておけば大丈夫だろう。枝打ちの終わった丸太状態の木をどんどん『収納』する。
切り株がまだ残ってはいるものの、だんだんと視界が開けてきた。
目印の板塀の外、浅めの林を抜けると少し先に川が見えた。川の近くまでいってみると、土手もない、ただ平野を流れている大きな川なのがわかる。
「あー、結構、川幅大きいな」
今までは大雨になったとしても、山に住んでるから気にしなかったけれど、これ、下手すると洪水になって溢れてくる可能性もあるかも。
しかし、土手を作るっていうのも……『ヒロゲルクン』ならできるのか?
「あー。あるわ」
そう。メニューにあった。正確には、土留とでもいうのだろうか。土を盛って丸太を杭で支える感じ。でも、この程度じゃ、洪水とかじゃあっさり流される。
「防風林みたいに、大きくなる木とかを植えたら、少しは違うか?」
土の精霊にお願いすれば、きっとすぐに大きく成長するかもしれないけど……焼け石に水かもしれない。
どうしたものか。
「五月、何をしてる?」
「へあっ!?」
一人で考え込んでいたら、いつの間にかエイデンが背後に立っていた。
そういえば、ここは結界の外だったっけ。
「あー、いや、この川、洪水になったら危ないかなぁ、って」
「うん? さすがにお前の住んでいるところまでは溢れんだろう?」
「いやいや、今、あそこにドッグランを作ってるのよ」
「どっぐらん?」
林の中、シロタエたちのドタンバタンやっている音が響いている方を指さしながら、ドッグランの説明をする。
「なるほど。犬どもの遊び場ってことだな?」
「そうそう。だけど、この川が溢れたら、すぐに流されちゃうかなって」
「だったら、こんなのはどうだ? ちょっと離れろ……ほれ」
エイデンがくるりと指先を回しただけで……高さ2mくらいの盛り土が現れた。
「は?」
「これをだな、こんな感じで~川に沿ってだな~」
どんどんと盛り土が繋がっていって……土手が出来てしまった。
「……凄いね」
「で、あろう?」
自慢気なエイデン。
――今度から、こういう大がかりなのはエイデンにお願いしよう。そうしよう。
心の中で、そう思った私なのであった。





