第219話 ドッグラン計画始動
翌朝。
山の風がひんやりと涼しい。これが昼間の直射日光があたると、暑いこと、暑いこと。あちら側よりはだいぶマシではあるけど。
朝の一仕事を終えて、アウトドア用の椅子に座り、ドッグランを作るにあたって、まずはどこに作るべきか、『ヒロゲルクン』の地図を見ながら考えた。
正直、山の中には、ログハウスの敷地のような広くて平らな面はない。そのためにわざわざ山を削るのはなぁ……。
「山裾のあたりは、うちの敷地ではないけど、誰の土地かもわかんないんだよね」
山自体が禁足地のせいもあって、周辺に町や村がないのは、この前、最寄りと言われる町に行った時に『地図アプリ』で見て知った。
ちなみにあの街、『地図アプリ』で見ると、方角でいえば西北側の端に載っている。
中央にあるのは、私の山。これを中心に地図ができているんだと思う。しかし、その山も大きな山脈みたいなものの一部な模様。それも西側の端っこだ。
この山の南側には大きな川が蛇行していて、うちの湧き水が流れ込んでいるのはこれだ。川沿いには町や村はなさそう。海もない。ここって、けっこう内陸にあるってことなのかな。
ダウンロードしたばかりでバージョンが低いせいか、この地域限定になっているのかもしれない。そのせいもあるのか、キャサリンたちの住むだろう、王都っていうのは載っていなかった。
あの街ですら、車で2時間+α。だいたい時速30キロで走ってたけど、地面が悪かったから、もっとスピードは遅かったかもしれない。となると、この地図の範囲は、だいたい半径50キロくらい? 首都圏くらいの広さか?
「ガズゥたちの国は、北か東か」
できるなら国境線とか、都道府県的な境界線も欲しいところ。これもバージョンアップで追加されることを期待するしかない。
ここ1年、遭遇したのは盗賊くらい。キャサリンやガズゥたちは攫われてきたのでノーカウント。それがなければ、公爵たちやコントルさんたちが来ることはなかった。
「だったら、とりあえず、勝手にさせていただきますか」
作業する利便性を考えると、果樹園の下あたりに広がっている林あたりがいいかもしれない。ここはガーデンフェンスの範囲外になってしまうから、カウベル必須だ。
ガランガランと音をたてながら、果樹園の間を流れる水の流れに沿って下りていく。
ブルーベリーと桑の実はすっかり食べつくされてしまったので、次は梨が生るのが楽しみだ。
久々に通るから雑草が生えまくっている。『収納』から草刈り機を取り出して、騒音とともに草を刈っていく。
『五月様』
草刈り機の音に気付いたのか、ビャクヤが現れた。
「あ、おはよう~」
『今度は何をされるのです?』
私の後ろを少し離れたところからついてきたので、草刈り機を止めた。
「この山の下のところの林を切り開いて、ドッグランでも作ろうかなって」
『どっぐらん?』
「うん、簡単にいえば、チビちゃんたちの遊び場かな」
『……ほぉ』
うん?
なんかビャクヤの目がキランッとしたのは気のせいだろう……か?





