第218話 魔物の山
ログハウスの敷地は見事に、めちゃくちゃになった。
地面は凸凹だし、人工池の周辺はぬかるんでるし、竹箒は……使い物にならなくなった。
そして目の前には、魔物の山。
大きな羽のついたトカゲ(ワイバーンというらしい)が2羽(匹?)と、大きな掌のような形の角をもった大柄な鹿(レッドフォーンディア。角が赤っぽいからかな?)が3頭、ビャクヤよりも大きな、小さい角付きの熊。一番下にある熊は泥だらけになってる。
うん、あの大所帯で狩ってくるんだから、これくらいは狩ってくるかもねー。
でもね……多すぎじゃっ!!
『五月様、申し訳ございません……』
目の前で頭を下げるシロタエと、ビャクヤとハクに押さえつけられているちびっ子3匹。あれ、潰れてない?
『まったく、精霊たちの声も聞き取れないほどに暴れまわるとは』
「きゃうん、きゃう、うん(ごめ、ごめん、さいっ)」
「くぅ~ん(ごめんなさい~)」
「ぐぅ~」
ビャクヤ、そ、それ以上押したら、本当に潰れちゃうんじゃ。
『気持ちよく帰ってきてみれば……はぁ』
『……俺たちも、こんなんだったっけ?』
『ここまでではなかった……と思いたい』
ハクとユキの呆れたような声。
「まぁ、小さいし、初めてのお留守番だったわけだし、興奮しちゃったんでしょ」
『本っ当に、申し訳ございませんでした』
あははは、と空笑いしながら、敷地の方へと目を向ける。
精霊たちが地味にちょこちょこと直してくれてる。ありがたい。
竹箒は……また買ってくるしかないね。
「それよりも、あの魔物たちって」
『エイデン様からの贈り物も入っております』
ビャクヤが嬉しそうに報告してくる。エイデン大好きなのが、ありありとわかる。いつの間に、こんなに懐いた?
『特にあのワイバーンなどは、我々の魔法でも届かないくらい高い所を飛んでおりますので』
なるほど。羽の部分が割かれているのを見ると、落下してきたところを、一斉攻撃みたいな感じだろうか。
きっと楽しかったんだろうなぁ……って、これ、どうするのよっ。
「みんな、自分たちが食べる分とかは……」
『すでにいただいてきましたわ』
『レッドフォーンディアが群れてたからな。これ、旨いぞ』
シロタエとハクが味を思い出したのか、涎を垂らしているように見える。だったら、残りのも、と思ったら、これ以上はいいとのこと。
仕方がないので『収納』してから『分解』するか。食肉部分以外は『売却』してしまおう。一々、街まで行かないで済むのは助かる。値段が相場かどうかはわからないけど、ぼったくられてはいないはず。
でも魔石は、魔道コンロでも使うようになったし、これから先、何か新しい魔道具を買うかもしれない。念のため、とっておくか。
「あー、でも、もうこんなにお肉がいっぱいあっても、減らないか」
ガズゥたちがいた時は、足らなくならないか心配だったのに、今は腐らせてしまうんじゃないかと思うくらい。早いところ、『収納』をバージョンアップしたい! そしたら、こんなことで悩まずに済むのに!
「むぅ……だったら魔石以外全部売却でもいいか」
『五月様、五月様! レッドフォーンディアは食べて! 本当に美味しかったのよ!』
ユキが目をキラキラさせながら、足先で大きな鹿の角をつついている。
――ふむ。鹿肉か。
熊とか爬虫類の肉とかよりは、食べやすそう?
「わかった、わかった。じゃあ、なんちゃらディアのお肉はとっておくね」
私の言葉に、なぜか皆がご機嫌になっている。まぁ、私が食べきれない分は、この子らにあげてもいいし……って、もしかして、それが目当てか!?
……まぁ、いいけどね。





