第216話 旅立ちの朝(2)
エイデンとノワールがやってきて、朝食もにぎやかになった。
2日目ともなれば、コントルさんたちも慣れるかなぁ、と思いきや、そう簡単にはいかないようで、エイデンが大皿にのっているベーコン(この前、燻製で作りまくったアレ)の山に手を伸ばすたびに、ビクッとなってて、申し訳ないけど……ちょっと面白かった。
ガズゥたちは、暑くなる前に旅立つことになった。
空は白い雲がもくもくと高く立ち上がり、これから暑くなりそうな予感がする。
ガズゥたちの背中には、パンパンに膨らんだ私のお手製リュック。ちょっと大きめにしたけれど、それでも子供の背中では、あまり大きくはない。
その中には、一緒に作ったアルファ米や燻製、ドライフルーツなどの食料の他、水筒に着替えやタオルなんかも入れてある。
水筒は、500ミリリットルのステンレスの保温の効くタイプを一人に1本用意した。中には水と氷、それに小さな水の魔石がいくつか入っている。水の魔石は、ガズゥやホワイトウルフたちが狩ってきた魔物から採れたのを、とっておいた物だ。なんで魔石? と思ったのだけれど、水の精霊が入れておけというので、言うとおりにしてみた。何らかの効能があるのを期待する。
着替えといっても、それぞれが気に入ったTシャツを1枚だけ。聞いてみると、色違いの犬の足跡のマークのついているのを持って帰るらしい。他の服は、長屋に置いていくのだそうだ。ガズゥ曰く、「絶対に、また来るから!」とのこと。ちょっと嬉しくて泣きそう。
そう簡単には来れるような場所ではないのは、私でも想像できるけれど、その気持ちが嬉しい。
その他にお土産にと、ボルダの実と梅の実の苗をビニール袋に入れて渡した。
村にボルダの実があれば、何かあった時に役に立ってくれるのではないか、と。梅の実は、結界は無理でも悪い物を浄化できたらいいな、っというだけ。本当に気休めみたいなものだ。一応、こっそり、土の精霊にお願いだけはしておいたから、なんとか根付いてくれるといいな。
「ガズゥ、テオ、マル」
名前を呼ぶと、コントルさんたちの傍にいた3人が駆け寄ってくる。
この子たちを助けて、一緒に生活して、約1か月くらいだろうか。彼らが帰ってしまうというのを、やっと実感する。
――寂しく……なるなぁ。
目の前の3人の、不思議そうな顔に、なんとか笑みを浮かべて、しゃがみこむ。
「これは、キャサリンたちにあげたのと同じミサンガよ」
3人の細い手首に結びつける。
「無事に帰れますように……よしっ!」
私は立ち上がると、彼らをコントルさんたちの方へと背中を押した。





